ローマ法王の辞任は有り得るか

ローマ法王の辞任は有り得るか
2010年4月5日 ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 世界に11億人以上の信者を抱えるローマ・カトリック教会の最高指導者ローマ法王べネディクト16世は16日、83歳の誕生日を、19日には第265代法王就任5年目を迎える。本来ならば、祝賀会を盛大に開催したいところだが、今年は少々、タイミングが悪い。アイルランド教会から始まった聖職者の未成年者への性犯罪問題がドイツ、オーストリア、オランダ、スイス、イタリアなど欧州各地の教会に飛び火し、法王の責任を問う声が出てきたからだ。
 法王が9月訪問予定の英国ロンドンで先月末、聖職者の未成年者への性的虐待問題に抗議し、ローマ法王の辞任を求めるデモが行われた。米国からは法王に裁判所の出廷要求が出ている。異常な事態だ。
 ドイツ出身のべネディクト16世は就任以来、不祥事が絶えなかった。法王就任初年の9月、訪問先のドイツのレーゲンスブルク大学の講演で、イスラム教に対し「モハメットがもたらしたものは邪悪と残酷だけだ」と批判したビザンチン帝国皇帝の言葉を引用したため、世界のイスラム教徒から激しい反発が起きた。また、アフリカ訪問の際の「コンドームの不要発言」など、法王自身の発言内容が不協和音を生み出すケースが少なくなかった。聖職者の未成年者への性犯罪問題でも教会最高指導者として対応が遅すぎた。事態の深刻さを過小評価していたのかもしれない。
 ベネディクト16世はミュンヘンで学生時代を過ごした後、神学教授を務めた人物だ。バチカン法王庁に入った後は、元異端裁判所の教理聖省局長を久しく勤め、「新カトリック教理要綱」をまとめた張本人だ。現ローマ法王は元々学者だ。学者は過去の文献や著作には強いが、牧会や説明は苦手だ。その点、巧みな会話と気さくな言動でカトリック信者だけではなく、他の宗教者からも広い支持者を得た前任法王ヨハネ・パウロ2世は、現代的に表現すれば、「スーパー・スター」だった。旧西独のシュミット首相(当時)が「ヨハネ・パウロ2世となら、何でも話し合いができる」と感嘆したほどだ。学者べネディクト16世にヨハネ・パウロ2世の外交センスを求めることは酷だろう。
 バチカン放送はここ数日、批判にさらされるべネディクト16世に連帯感を表明する高位聖職者のコメントを報じている。イタリア、フランス、米国、そして南米の教会司教たちが「法王支持」を表明しているのだ。これまた異常だ。逆に言えば、法王への批判の声を無視できなくなってきたわけだ。バチカンも必死に応戦しているわけだ。
 5年前のヨーゼフ・ラッツィンガー教理省長官(当時)の法王選出は、本格的法王出現までのショート・リリーフと受け取られてきたが、聖職者の性犯罪問題がさらに拡大し、法王への批判の声が一層高まれば、法王の辞任も非現実的でなくなってくる。バチカンとしては終身制の法王の「辞任」といったシナリオだけは回避したいわけだ。



・いろいろな問題にさらされているんだ。前法王が包容力があったために対比されて考えられるのだろう。
関連記事
スポンサーサイト



コメント


トラックバック

↑