人生いろいろ:軽口と人生態度

† 沖縄の地元二紙のfacebookを購読し出したのは、翁長沖縄県知事が訪米し沖縄の窮状を訴えに行った時からだ。それは沖縄の地元紙が書いていた知事の行動内容が全国紙には書かれていなかったからだ。沖縄県の県内情勢は特に知る必要がないにしても国政を揺るがせかねない基地問題を含める事案だけに、全国紙も訪米の詳しい様子を報道してほかった。本当の沖縄、それを知ることが第一歩となる。それは日本の現状についても同じことだ。全国紙が伝えるものと地元の人が伝えることを比較できる時代にある。

‡ 下記のような異常な雰囲気が国政に蔓延しており、こうしたことを容認する人たちが大手をふっていることが不思議でならない。人生態度は各自が決めることであろうが、それが究極的に人類や隣人にとってどうであろうかという逡巡がなければ達成されることはないだろう。私たちは時代の証言者であり当事者なのだ。

中日春秋(朝刊コラム)
2015年6月27日 中日新聞

 ある国で、新しい法律がつくられた。「ペット特別措置法」である。茶色以外の犬や猫は飼ってはならぬ。黒い犬も白い猫も「処分」せねばならぬという法律だ

▼この法を批判する記事を連日のように載せた新聞は、政府によって廃刊に追い込まれる。残ったのは「茶色新報」なる新聞だけ。そんな状況でも、人は考える。「茶色に守られた安心、それも悪くない」

▼茶色は、フランスではナチスや全体主義を思わせる色。かの国で十数年前に出版されて、大反響を呼んだF・パヴロフ氏の短編『茶色の朝』(藤本一勇訳)は、人々が異を唱えることをためらううちに、あらゆるものが一色に染め上げられるさまを淡々と描いた寓話(ぐうわ)だ

▼首相に近い自民党の若手議員の会合で「マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい」との発言があったという。その場で作家の百田尚樹氏は「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」と語ったともいう

▼沖縄の二紙とは、安保法制などで反対の論陣を張る琉球新報と沖縄タイムスのこと。「茶色新報」や「茶色タイムス」を求めるような人が、この国の権力の中心近くにいるのだとするなら、茶色の寓話も妙に生々しく響く

▼パヴロフ氏は執筆の動機をこう語っている。「最初は重大に見えないことが、恐ろしい結果につながり、気付いたときには手遅れになることを知ってほしい」



<社説>百田氏発言 開いた口がふさがらない
2015年6月27日 琉球新報


 ものを書くのをなりわいとする人間が、ろくに調べず虚像をまき散らすとは、開いた口がふさがらない。あろうことか言論封殺まで提唱した。しかも政権党の党本部でなされ、同調する国会議員も続出したのだ。看過できない。

 安倍晋三首相に近い自民党若手国会議員の勉強会「文化芸術懇話会」で、作家の百田尚樹氏が「沖縄の2紙をつぶさないといけない」と述べた。

 出席した議員も「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番だ。経団連などに働き掛けて」と述べた。気に入らない報道は圧力でつぶすということだ。

 国会でこの問題をめぐる質疑が出たが、自民党総裁である安倍首相はおわびを拒否し、発言議員の処分も拒んだ。言論封殺に対する首相の認識を疑わざるを得ない。

 百田氏は米軍普天間飛行場について「もともと田んぼの中にあった。まあなんにもない。基地の回りに行けば商売になるということで人が住み出した」とも述べた。事実誤認も甚だしい。

 戦前の宜野湾村役場があった場所は現在の滑走路付近だ。周辺には国民学校や郵便局、旅館、雑貨店が並んでいた。さらに言えば琉球王国時代の宜野湾間切の番所(村役場に相当)もここだ。有史以来の地域の中心地なのである。

 ここは沖縄戦のさなか、米軍が地元住民を収容所に閉じ込めている間に建設を強行した基地だ。民間地強奪を禁じたハーグ陸戦条約違反だが、戦後も居座った。土地を奪われた住民が古里の近くに住むことを金目当てであるかのごとく言うのは、誹謗(ひぼう)中傷に等しい。

 しかも日本復帰までは落下傘降下訓練が主で、今のような運用ではなかった。1974年に滑走路が整備され、76年に岩国基地から海兵航空団が移駐してきて今のような運用になったのだ。62年には既に市制に移行し、75年に人口は5万人を超えていた。市街地に航空団の方がやってきたのである。

 この情報は宜野湾市のホームページにある。少し調べれば分かる話だ。百田氏はそれすらせずに虚像を拡散させたのである。軍用地主が「みんな大金持ち」というのもうそだ。極めて悪質と言わざるを得ない。

 「沖縄2紙をつぶす」発言について、百田氏は翌日になって「冗談として言った」と述べたが、言い訳は通用しない。言論封殺を望む考え方自体が問題なのである。



社説[自民勉強会 暴言]権力による言論統制だ
2015年6月27日 沖縄タイムス


 政党であれ個人であれ批判の自由は保障されなければならないが、これはまっとうな批判とはとてもいえない。政権与党という強大な権力をかさにきた報道機関に対する恫喝(どうかつ)であり、民主的正当性を持つ沖縄の民意への攻撃である。自分の気に入らない言論を強権で押しつぶそうとする姿勢は極めて危険だ。

 安倍晋三首相に近い自民党の若手議員約40人が25日、憲法改正を推進する勉強会「文化芸術懇話会」の初会合を党本部で開いた。

 講師として出席した作家の百田尚樹氏は、沖縄の地元紙が政府に批判的だとの意見が出たのに対し、「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」と発言した。一体、何様のつもりか。見過ごせないのは、百田氏の基地問題に関する発言に事実認識の誤りやゆがみが目立つことだ。

 百田氏は米軍普天間飛行場の成り立ちについて、「みんな何十年もかかって基地の周りに住みだした」と指摘した上で、騒音訴訟の判決に触れ、「そこを選んで住んだのは誰だと言いたい」と自己責任論を展開した。

 とんでもない認識不足である。普天間飛行場は沖縄を軍事占領した米軍が本土侵攻に備えて住民を収容所に移住させ、地権者の合意もなしに一方的に建設したものだ。宜野湾市には戦後、普天間飛行場のほかにもキャンプ瑞慶覧、キャンプ・マーシー、キャンプ・ブーンなどの基地が建設された。地域の人々は、旧居住地に戻れないために基地の周りや他地域で不便な生活を強いられたのだ。

 司法は騒音の違法性を認め、いわゆる「危険への接近」論を採用していない。普天間飛行場の騒音被害を自己責任だと主張するのは、周辺住民の苦痛や不安を知らない局外者の暴言というしかない。

 百田氏は米兵によるレイプ事件についても「沖縄県全体で沖縄県自身が起こしたレイプ犯罪の方がはるかに率が高い」と語ったという。人権感覚が疑われる発言である。

 勉強会では安保関連法案を批判するメディアの報道について、出席した議員から「マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働きかけてほしい」との声が上がった。

 4月には自民党情報通信戦略調査会が放送内容に文句をつけ、放送法上の権限がないにもかかわらず、テレビ朝日などの経営幹部を呼びつけたばかり。国会の1強体制がもたらした「権力のおごり」は、とうとう来るところまで来てしまったようだ。

 「沖縄に寄り添う」と口では言いながら、安倍自民党の対応は沖縄の多くの人々の感情を逆なでし、反発を増幅させている。

 昨年の名護市長選、県知事選、衆院選で「辺野古ノー」の圧倒的な民意が示されたことを地元メディアの報道のせいにするのは、現実から目をそむけるようなものである。

 一連の選挙でなぜ、あのような結果が生じたのか。沖縄の声に謙虚に耳を傾け、見たくない現実にも目を凝らすのでなければ沖縄施策は破綻する。



追記

百田氏「本気でつぶれたらいい」 沖縄2紙に
2015年6月28日 19時07分 中日新聞

 作家の百田尚樹氏は28日、大阪府泉大津市で講演し、自民党勉強会での「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」との自らの発言に触れ、「その時は冗談口調だったが、今はもう本気でつぶれたらいいと思う」と話した。

 講演を聞いた人によると、共同の抗議声明を出した沖縄タイムスと琉球新報に対し「おかしな話だ。私の話を何も聞いてない。伝聞にすぎない」と批判。さらに「まだしばらく2紙とはやりあっていかないといけない」と述べた後「本気」発言をした。

 講演では、ツイッターに「私が本当につぶれてほしいと思っているのは、朝日新聞と毎日新聞と東京新聞」と投稿したとも話した。




翁長知事「基本的認識に間違い」と批判
2015年6月29日 NHK

自民党の若手議員らが開いた勉強会で、沖縄県の地元紙など報道機関を批判する意見などが相次いだ問題で、沖縄県の翁長知事は「表現の自由、報道の自由は私たちが守らなければならない重要なことだ。基本的な認識において間違っているのではないかと思う」などと述べ批判しました。

今月25日、自民党の若手議員らが開いた勉強会で、出席した議員から沖縄の地元紙の報道について「沖縄の世論がゆがんでおり何とかしなければいけない」といった意見が出されたほか、講師として招かれた作家の百田尚樹氏からアメリカ軍普天間基地の周辺地域について、「街の真ん中に基地があり、騒音がうるさいのは分かるが、そこを選んで住んだのは誰だ」といった意見が出されました。

これについて翁長知事は29日夕方、報道各社に対し「表現の自由、報道の自由は私たちが守らなければならない重要なことだ」と指摘したうえで、「主張が偏向しているとか間違っていると話すこと自体が基本的な認識において間違っているのではないかと思う」と述べました。

さらに「自民党の若手の皆さんがそういう議論をしたのであれば永遠に自民党が政権を握ると錯誤しているのではないか」と批判しました。

また百田氏の発言については、「本当に悲しいし寂しい。知識人であるがゆえに大変怒りも出てくる」などと述べました。




<報道圧力発言>日本新聞協会「報道の自由を否定」抗議声明
2015年6月29日 毎日新聞

 ◇日本記者クラブ「言論・報道・表現の自由の擁護を」

 自民党国会議員の勉強会で出席者が報道機関に圧力をかけるような発言をした問題について、新聞各社などで組織する日本新聞協会の編集委員会は29日、「極めて深刻な問題だ。表現の自由をないがしろにした発言は、報道の自由を否定しかねないもので到底看過できず、強く抗議する」との声明を出した。

 新聞・通信・放送各社が加盟する日本記者クラブの伊藤芳明理事長も同日、「みずからに批判的な報道は規制し、排除してもいいという考え方に反対する。言論・報道・表現の自由を擁護することを改めて表明する」との声明を出した。



<放送アーカイブ>国会図書館で全番組保存 超党派が法案化
2015年6月29日 毎日新聞

 ◇放送業界は「事後検閲につながる」と警戒
 国立国会図書館がテレビやラジオ番組を録画・録音して保存する「放送アーカイブ」構想の実現に向け、国会の議論が加速している。今年5月には超党派の議連が発足したが、議論を主導する自民党内には、テレビの報道への不満から、事後検証にアーカイブを活用しようとする意見もあり、放送業界は「事後検閲につながる」と警戒を強めている。

 構想は、放送番組を文化的資産として保存しようと、12年3月から衆参両院の議院運営委員会で議論され、骨子案も公表された。「放送アーカイブ議連」(会長、野田聖子自民党衆院議員)は今年5月、自民、民主、公明、共産などの27人が呼びかけ人となって発足。議連はこの骨子案を継承している。

 骨子案によると、国会図書館で受信できるNHKや在京民放5局、BS放送7局、首都圏のAM・FMラジオの全番組を保存。コピーは認めず、保存後に一定期間を置いて視聴できるようにする。

 これに対して放送業界は「公権力によるメディア監視につながりかねない」と反発し、国会議員と距離の近い国会図書館以外での実施を求めている。また、図書館での保存、閲覧は放送の目的外使用に当たるため著作権者から改めて許諾を得る必要があるという課題も指摘されている。

 議連は、議論がまとまり次第、国立国会図書館法や著作権法改正案を国会に提出する方針。【丸山進】

 ◇自民党議員「どう報道したか調査するのは大事」
 今年3月、放送アーカイブ構想を議論した参院自民党の政策審議会で、島尻安伊子参院議員(沖縄選挙区)は「地元のメディアがかなり偏っていたりする。あの時あの問題をどう報道したかをサーベイ(調査)するのは大事なこと」と述べ、アーカイブ構想に賛意を示した。

 島尻議員は毎日新聞の取材に「検閲や規制の意味で発言したわけではない」と釈明したが、自民党がメディア監視を強めていることに、放送各局は警戒感を募らせている。今年4月には自民党がテレビ朝日とNHKの幹部を党本部に呼び、番組内容について事情を聴いた。

 研究者や視聴者が放送を研究や批評の対象とすることはその質の向上に資する。そのための番組の保存は必要だろう。しかし、メディアのチェックを受ける権力の側が放送法第4条が定める「政治的に公平であること」をたてにメディアを監視し、圧力をかけるためにアーカイブが利用されることは避けなければならない。

 アーカイブをどこが運営するのか、どのような番組を保存するのかなど、制度設計には慎重な議論が求められる。【丸山進】


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