NHK SWITCHインタビュー 井村雅代×広上淳一

NHK
SWITCHインタビュー 達人達(たち)「井村雅代×広上淳一」Vol.69
2015年2月14日 Eテレ
2015年6月20日 Eテレ アンコール再放送

国内外で大人気の「踊る指揮者」広上淳一が名伯楽として名高い井村雅代シンクロ日本代表コーチと激突!やる気を引き出す叱り方、プレッシャーを味方にする方法、教えます!

8大会連続14個のメダルという驚異の結果を出し続けてきた井村の持論は「一番できのいい子にレベルを合わせる」「本番前にリラックスさせない」など一見逆説的に見えることばかり。一方、中学をサボってアイドルの追っかけに精を出すなどエリート教育とは無縁の人生を歩んできた広上は「成否は最初の5分で決まる」「嫌われることを恐れるな」など世界の舞台に立つヒントを伝授。カリスマ指導者たちが語る、世界で闘う秘けつ!

出演:シンクロ日本代表ヘッドコーチ…井村雅代、指揮者…広上淳一
語り:吉田羊、六角精児
ディレクター:田向奈央子


・この対談番組は、二人のゲストが前後半に分けて、それぞれ主導して相手のインタビューを引き出すという意図の番組。好評の番組はアンコール放送となる。今年度から再放送枠をもったことで見やすくなっている。

本放送時には見逃していて今回、初めて見たが大変に面白い、参考となった。

指揮者の広上さんについては、昨年度からFMで放送されている番組を聴いており、人柄は十分に知っている。彼も自覚しているが、音楽人生スタートが遅れてしまって念願の東京藝大も入れてもらえなかったことは反骨人生のエネルギーとなっている。ただ優しい人柄なので、人づきあいを会得してからは本来性が発揮し楽団員に好まれる指揮者へと変貌した。

この番組の内容については、他のブログでも話されたものの要約をされており触れない。いろいろと名言があるので心に止めたいものだ。また動画もあるのでご興味あればご覧いただければいい。

広上さんは東京音大指揮科教授として母校で後輩の指導をしている。そこで悩まれているのが、どう若者を育てるかということらしい。彼の育った経験から、若い人には回り道をさせたくないという配慮なのだが、そうした配慮が実は若者の教育として良いのかという壁にぶち当たっているようだ。

一方で、シンクロの井村コーチは中国ナショナルチームも育てて、現在は日本チームへと復帰して指導をしている。この名声は知っていたが、具体的に話を聞くのは初めてであった。

全体として感じたことを列挙してみたい。

井村コーチの方法論は、シンクロ選手はプールの中だけじゃなく普段の生活をきちんとさせることから始めていくこと。間違っているところを具体的に教えて、それが直るまで根気強く付き合うこと。トップ選手に全体を合わせて指導することが結局はチーム全体の力を押し上げること。目標をはっきりとさせて選手に動機づけを与えること。

8人、ペア、ソロのシンクロと、50~100人規模になるオーケストラでは少し事情が違うのかもしれないが、人心掌握術では共通するものも多い。

広上さんは、日本の教育の一番の間違いは、登山に例えると入口はここしかないと決めてしまい、そこから登ることが一番安楽に頂上を目指すシステムになっていることだという。これは彼が辛酸を舐めてきた音楽閥の問題も含んでいるのだろう。つまり東京藝大や桐朋学園大学を卒業しないと一流と見做されない日本の風土を批判したものだろう。

広上さんが、ふと漏らした彼の煩悩に、「成功、名声」があるらしい。つまり指揮界で成功することに対する疑問がある。彼が音楽監督を務める京都市交響楽団の演奏会はチケットを取るのが難しいくらいの大人気であり、評価が高い。指揮者としての成功することで我を忘れるのではないかという不安があるのだと思う。ここに二人の性格の違いがある。

二人の違いははっきりとしていて、井村コーチは後を引かないカラッとした性格、広上さんはくよくよと考える性格からくるものだ。FM番組などで語られたことを敷衍すると、人間関係で悩んでしまい指揮活動もブランクを自ら作ってしまうほどの繊細さがある人柄なのだ。広上さんは、そこを脱出したことで、つまり自分を出すことを覚えたことで演奏家との付き合いを上手にできるようになった。

オーケストラ団員は、それぞれがサムライであると形容したが、それほどだから指揮者の仕事は難しい。広上さんが語ったように、指揮者はオーケストラをコントロールすると思われているがそれは間違いで、演奏を補佐する役割だということだ。これは現代の指揮者で成功している人と共通する見方である。

井村コーチの指導は実に厳しい。それは怒っているのでなく叱っているからで感情の赴くままにしているわけではない。それが選手に分かれば、いくら指導が厳しくてもついていけるのだろう。

考えると、シンクロの選手は20歳代前半までの年齢だ。オーケストラは20歳から60歳台まで、幅広い演奏家を対象とする。井村コーチは孫くらいの女性を相手にする。広上さんは自分よりも年上の演奏家をずっと相手にしてきたという違いは大きいだろう。

個人的に知っている音楽家たちの話だが、彼らは非常にプライドが高くて扱いは難しい。それは演奏技術があるなしに関わらず、音楽家全般に言えることだろう。そうでなければ演奏はできない。

個人技でなくチームとして一つの目標を設定し達成することはかなり難しい。それをしていくためにはコーチとして何か卓越した見方が必要なのだろう。それを誰もが知りたいし学びたいと思っていても簡単にいかないのは、指導者にきちんとした考え方あり方向性を持っていること、人間についてよく理解していることが前提となろう。

過去にも対談番組は作ってきたNHKだが、前後半に分けて相手の懐に飛び込んでさせるという企画は面白い。過去の出演者のラインナップを見てみると、やはり有名タレントや文化人が多いことが不満だ。有名でなくても面白い人を発掘し魅力を引き出せなければ、他局や雑誌対談と変わらなくなるだろう。

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