人生いろいろ:国の行く末を考えないなら・・・

† 国の根幹は人づくりであり教育である。長期政権となり愛国や歴史認識の強調が進む一方で、国を支える高等教育はガタガタになっている。全世界の論文引用数などから評価される指標では東京大学も欧米水準に及ばない。むろんユニークな研究者は日本にも多く、一概に断定しづらいが多くは海外への頭脳流出組として日本を去る。文科省の通知素案というものでは、人文社会系の規模縮小を進めようとしている。覚えておられる方もあろうが、国は博士を量産するために大学院課程定員を大幅に拡充していたのだ。今回は理工系学部の産業と直結したものは温存しつつ、お金にもならない人文社会系を縮小する。

‡ いわゆるオーバードクターという博士号を持っていても就職できない人たちの嘆きは各所で聞かれる。基礎研究の大事さが強調されているが、その基礎たる部分の教育が十分に行われていないという現状は変わっていない。昨年度発覚した理研の万能細胞問題も、研究者の養成が上手くいっていない例としても考えていいだろう。法科大学院のように、大こけしたものも含めて、一貫したモノの見方をせずに右往左往する高等教育が大きな成果を生み出すこともなく、いたずらに人材の墓場を作ってしまう現状を憂う。


国立大学の人文系学部・大学院、規模縮小へ転換 文科省が素案提示
2015.5.28 産経ニュース

 文部科学省は27日、全国の国立大学に対して人文社会科学や教員養成の学部・大学院の規模縮小や統廃合などを要請する通知素案を示した。理系強化に重点を置いた政府の成長戦略に沿った学部・大学院の再編を促し、国立大の機能強化を図るのが狙いで、6月上旬に文科相名で大学側へ通知する。

 素案は、同日開かれた国立大の評価手法などを審議する有識者会議で提示された。国立大は6年ごとに中期目標を文科省に提出しなければならず、各大学は通知を参考に6月末に中期目標を文科省へ提出する。

 通知素案では、少子化による18歳人口の減少などを背景として、教員養成や人文社会科学などの学部・大学院について「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むように努めることとする」と明記された。

 政府の試算では、平成3年に207万人だった18歳人口が42年に101万人まで半減する。文科省は少子化に伴う定員縮小の影響を指摘したほか、文系の学部・大学院の人材育成方針が明確でないなどの理由もあげた。

 組織再編の動きはすでに出ている。弘前大(青森県)は来年4月から人文学部(3課程)を人文社会科学部(2課程)に再編。教育学部でも、教員免許を取得せず芸術や体育を学ぶ1課程を廃止し、2学部で定員を計150人減らす。一方、理系の理工学部と農学生命科学部の定員は90人増やす。

 今後、こうした形で他の大学でも、地域性や得意分野に重点を置いた文系学部の廃止や統合を進めることになる見通しだ。

 素案は、実績にばらつきがある法科大学院について、定員規模の適正化や組織の廃止も含めた検討も求めた。


識者の指摘
国立大学改革亡国論「文系学部廃止」は天下の愚策 - 内田 樹
2015年05月30日 PRESIDENT Online  


追記 さらに実学移行への傾斜拍車

政府、職業訓練専用の高等教育機関設立方針 4年後にも開校
2015.6.4 産経ニュース

 政府は4日、産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)を開き、経済成長に向けた人材を育成する高等教育機関を設立する方針を示した。今月中にまとめる成長戦略に盛り込み、平成31年度の開校を目指す。安倍首相は「実社会のニーズに合わせた職業教育を行う新たな高等教育機関制度を創設し、学校間の競争を促す」と強調した。

 現行の大学などでは、産業界が求める実務的な教育が行われていないとの指摘がある。新たな教育機関は、ITなど成長が見込まれる産業分野での職業養成に特化したカリキュラムを、産業界と共同で作る。高校の新卒に加え社会人の入学も可能にし、キャリアアップへの活用を促す。大学や短大、専門学校からの移行も認める方針だ。

 また、教育訓練休暇制度を導入した企業や、キャリア変更を希望する中高年を受け入れる企業に対し、助成金を拡充する方針も盛り込んだ。安倍首相は会合で「個人の意思と選択に基づき、必要な能力開発を支援する」と述べた。

 政府は社会の変化に対応した高等教育機関の設立に向け検討を重ねていた。来年に制度の内容を固めて、31年度の開校を目指す。



夕歩道(夕刊コラム)
2015年6月18日 中日新聞

 知の拠点、いかにあるべきか。文部科学省が国立大学に人文社会科学系や教員養成系の学部・大学院の改廃を求めている。お国が次世代に求めるものは、まず実学。教養や洞察力など邪魔ものか。

 入学式や卒業式では国旗掲揚と国歌斉唱を、と下村博文文科相が国立大の学長に。お国が最高学府に求めるは、小中学校のような式典進行ということか。真理の探究よりも上意下達の規律の追求。

 憲法学者の言うことなど聞いていられるか、という政府である。意に沿わぬ答えを出す学問や理屈っぽい人材に何の用もないのだろう。目指すは為政者に都合のよい大学か。学の軽視、極まれり。


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