人生いろいろ:免疫系促進する薬、ガン治療へ

† 科学の知見には驚かされるものが多く、それらを扱った本や雑誌もある。例えば、近くの書店には科学雑誌『Newton(ニュートン)』の別冊が幾冊も置かれている。以下のコラムにあるように人間など自然のホンの一部に過ぎないことを知らせ、人間の営みへの限界を感じさせるものだ。自然の仕組みを知れば知るほど、卑小な人間がいかに自然と調和する形に仕上げられおり微妙なバランスの上にかろうじて存在することに驚くことだろう。

‡ そして免疫反応だが、がん治療薬に発想を変えた革新的なものが出始めた。記事にあるように、従来の免疫細胞を活性化しガン細胞を殺すのでなく、免疫系を阻害するたんぱく質を減らすことで自身が持っている免疫力を強化し、結果的にガン細胞を封じ込めるというものだ。その効果が著しいと報道された。それもこれも人間本来が持っている機能を発揮させることであり、生物の柔軟性が理解されよう。


中日春秋(朝刊コラム)
2015年5月26日 中日新聞

 私たちの身体は、およそ六十兆個もの細胞で形づくられているそうだ。その一つ一つにあるDNAをすべてつなげると、どれほどの長さになるのか

▼おおよそ千二百億キロ。光でも八分二十秒かかる地球と太陽の間を、四百往復するほどの長さだ。壮大な宇宙の中では私たちはケシ粒のごとき存在だが、その粒の中に生命の小宇宙が広がっているのだ

▼今年出版された『あっと驚く科学の数字』(講談社)に、「六百兆」という数字がある。私たちの体内にはそれほどの数の細菌がすんでいるというのだ。この膨大な細菌と共生するのに欠かせないのが、免疫だ

▼その免疫をめぐっても、驚く数字がある。「一千万」。体内では多様な免疫細胞が巧みな連携プレーを重ねており、実に一千万種類以上もの病原体に対応できるそうだ

▼共生すべき相手を敵と見誤って攻めれば、病につながる。敵味方入り乱れた膨大な数の微生物を前に、絶妙な判断を下す仕組みはどうなっているのか。そういう謎に「哲学的な面白さ」を感じて挑み、免疫反応のブレーキ役を務める細胞を発見した大阪大学の坂口志文(しもん)教授にきのう、中日文化賞が贈られた

▼やたらと攻めたがる仲間を戒めて、待ったを掛ける。そんなブレーキ役がしっかり働くことで、共生が成り立ち、全体の健全が保たれる。確かに「哲学的」であり、「社会的」でもある造物の妙だ。



米大学研究チーム発表のがん治療 末期患者のがん細胞が消滅
2015.05.29 NEWSポストセブン ※週刊ポスト2015年6月5日号

 米ペンシルベニア州フィラデルフィアで4月18~22日、世界最先端のがん治療研究が発表される「米国がん研究会議」(米国がん学会主催)が開かれた。

 そこで、米ジョンズ・ホプキンス大学キンメルがんセンターの研究チームが、新しい治療法の効果について驚くべき発表を行なった。

 研究チームは、それまでの治療法では手の施しようがないタイプの乳がんに冒され、すでに他部位にも転移している患者21人に新薬を投与した。その結果、4分の1以上の患者に効果があり、そのうち2人はがん細胞が縮小、2人は検査でがん細胞が検出されない「寛解」と呼ばれる状態になったという。

 従来の医学ではなす術がなかった末期がん患者のがん細胞が“消滅”した──その発表は多くの研究者に衝撃を与えた。この新薬は「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる。

 同会議では、オープニングセッションから新薬の効果についての研究発表が相次いだ。世界中のがん研究者がこの新薬の研究に夢中になっているといっても過言ではない。慶應大学医学部先端医科学研究所長の河上裕教授は、「がん研究・治療の在り方を変える革命的な薬として期待されている」と指摘する。

「免疫チェックポイント阻害薬」とはどんな薬なのか。一般にがん治療法は4つに大別できる。手術などの「外科療法」、放射線を照射しがん細胞を破壊する「放射線療法」、抗がん剤投与による「化学療法」、そして「免疫療法」の4つで、免疫チェックポイント阻害薬は免疫療法の一種だ。

 健康な人の体内でも、がん細胞は日々生成されている。その数は1日およそ5000個。それでもがんにならないのは、免疫細胞ががん細胞を異物と見なして攻撃して死滅させるからだが、免疫力が弱ったり、機能しなかったりすると、がん細胞が増殖する。

 そのように人間がもともと持っている免疫機能を正常に働かせることでがんを治そうとするのが免疫療法の考え方だ。

 従来の免疫療法では、免疫力を高め、がん細胞への攻撃力を強めることに主眼が置かれていた。ところが、新薬はまったく新しい発想が取り入れられている。

「最近の研究で、がん細胞には免疫細胞の攻撃に“ブレーキ”をかけるタンパク質が備わっていることがわかりました。がん細胞の表面にある『PD-L1』というタンパク質が、免疫細胞の『PD-1』に働きかけると免疫の攻撃がストップしてしまう。この対応関係のことを『免疫チェックポイント』と呼んでいます。

 もともと、『PD-1』は免疫系の暴走を防ぐための仕組みなのですが、がん細胞はそれを逆手にとっているわけです。その免疫チェックポイントを無効にして、免疫系が攻撃できるようにするのが、免疫チェックポイント阻害薬のメカニズムです」(前出・河上教授)

 つまり、がん細胞がまとっている“鎧”を破壊し、免疫による攻撃を最大化する治療法なのである。


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