介護主夫始末記:「年寄りだまして大もうけ」群がる業者

† 団塊の世代が高齢者になる中、多くのビジネスが豊かな老後を演出し利益を得ようとしている。今やお金を持っている最後の世代である。加えて悪徳商法や詐欺行為をする人たちも無慈悲に同じことを考えて実行している。記事の一部にあるように、特に認知症様など判断能力に問題のある人を探して徹底的食いものにする。そうしたルートができあがっている。

‡ これに対して何ができるのだろうか。私の介護の中心は、本人の利益を守るための防波堤となるべく、24時間常時介護という選択をした。それができる人は限定されるとともに職業を制約する事態になる。家族が少ない現代では、こうした選択するしかない社会制度的な欠陥がある。介護は社会的な支援を必要とする時代に変わり、家族で対処は不可能なのだ。一般的に「騙される方が悪い」と言われる、確かにそうだ。ただ騙すことでしか生きられない人たちを心底から哀れな人たちだと思う。一方で、騙される人を守る人たちもいる。それが救いだ。


「年寄りだまして大もうけ」群がる業者 認知症社会
2015年5月10日 朝日新聞

 判断力が不十分なまま、業者から高額な商品を買わされたり、お金をだまし取られたりして財産を失ってしまう認知症のお年寄りが後を絶たない。

■営業電話「主人よりよっぽどやさしい」

 「認知症」「ボケ」「頭ヤバ」――。高血圧や糖尿病にも効果があるなどとうたい、高齢者らに電話で勧誘していた健康食品販売会社(東京)の顧客名簿には、住所、氏名、電話番号の下に、こうした走り書きが残っている。「認知?」とメモされた顧客には、3カ月間に4人の営業担当者が9回、電話をした記録もある。

 消費者庁は4月、この会社に対し、うその説明をしたほか、「認知症の消費者の判断力の不足に乗じ、売買契約をさせた」などとして、3カ月の一部業務停止を命令した。認知症の人に分割払いで約8万円の健康食品を売るなどしていた。顧客は31都道府県に広がり、5割以上は80歳以上のお年寄りだったという。

 「団塊の世代が定年を迎える。年寄りをだまして大もうけができる」。同社の元従業員は、幹部が言い放った言葉が忘れられない。

 元従業員らによると、営業方法はこうだ。過去に他社で健康食品を購入した高齢者ら23万人以上の名簿をもとに、パートが電話をかける。割安のサンプルを買った顧客には、社員が電話で販売攻勢。「以前に電話したこと自体を忘れているなど、10分話せば認知症かどうか分かった」という。

 営業担当の社員は約10人いて、高齢の女性2人が電話口で友達のように「もう少し飲む回数を増やしたら」と勧誘し、契約を重ねるのを見聞きした。一度に数十万円分を販売することもあったという。

 元従業員はいま、自らが加担してしまったことを後悔している。

 消費者庁によると、商品の成分はコラーゲンやビタミンなどで、メーカーからの卸売価格は1箱120粒で70円。これを別の会社を通して1万8千円で仕入れ、顧客には8万8千円で売っていた。だが、同庁の調査にこう語る高齢者もいたという。「頻繁に電話をくれて、主人よりよっぽどやさしい」

 同庁の処分について販売会社は今月8日、取材に「判断力不足に乗じた契約は断じてない。認知症の疑いのある顧客には販売せず、リストから抹消する作業をしてきた。後にそのような事実が発覚した際も真摯(しんし)に対応している」などと文書で回答した。

■90代女性、被害ほぼ1億円

 金融商品などを次々に売りつけられ、財産を失った認知症の高齢者もいる。

 2012年、東京都心に住む認知症の90代女性に代わって財産を管理する「成年後見人」に就いた司法書士は、女性の部屋をみて驚いた。投資や社債、健康食品、化粧品などのパンフレットがあふれていた。少なくとも1億円近くあったとみられる財産は、約100万円に減っていた。

 一人暮らしの女性には月4万円の年金と、所有するビルのフロアのテナント収入も月40万円あった。だが、10年ごろに異常が発覚する。女性が銀行でお金を振り込もうとしているのを、「振り込め詐欺」を疑った行員が止め、警察に通報したのだ。疎遠だった親戚に連絡が入ったが、すでに預金の大半は失われていた。女性は「6千万円振り込んじゃった」と話した。

 財産の大半を失った後も、女性には月々40万円以上の収入があった。

 女性は預金を失った後も投資会社の男性営業マンと頻繁に会い、お金を引き出したいときに通帳を渡していた。女性は「30万円を私が受け取り、残り10万円を定期預金にしてもらっているの」と話したが、定期預金の記録はない。司法書士が男性にただすと、「おろした金はすべて渡した。私は一銭ももらっていない」。お金の行方は分からないまま、女性は13年夏、老衰で息を引き取った。

 国民生活センターによると、「認知症等高齢者」の契約などのトラブルは昨年度、全国で9965件と、ここ数年、1万件程度で推移している。統計がある04年度の約1・5倍だ。8割は家族ら本人以外からの相談で、リフォームなどの訪問販売、健康食品などの電話勧誘が多い。

 センターの担当者は「高齢者の相談は年々増えているが認知症の場合は、本人からの相談が少なく、被害が潜在化しやすい。契約の経緯を覚えていないことも多く、被害の回復も難しい。被害を防ぐには、親族や地域など周囲の見守りが大切だ」と話している。

 実際、地域の「目」が被害の一部回復につながったケースもある。

 神奈川県内の認知症の一人暮らしの男性(89)は08年秋、リフォーム業者をかたる男2人に勧められ、実態のない工事に約500万円支払った。さらに「追加工事費680万円」を迫られ、支払う代わりに家と土地を差し出す契約まで結ばされた。男たちは男性をアパートに転居させて家を壊し、土地を売り払った。

 住民からの連絡で異変に気づいた地元の民生委員は、登記簿から男たちと関係する業者を割り出し、法的トラブルの解決を助ける「日本司法支援センター」(法テラス)に相談した。男性の後見人は預貯金や土地の返還を求めて提訴し、業者側が計1千万円を払う和解が成立した。男性はいま、そのお金をもとに別のアパートで静かに暮らす。(小寺陽一郎、松田史朗、本田靖明)

■認知症高齢者らを見守る家族や周囲へのアドバイス ※国民生活センターへの取材による

①日ごろから、本人の家の様子や言動におかしな点がないか気をつける
  《見守りから相談まで》
 ・不審な契約書や請求書、宅配業者の不在通知などはないか
 ・同種の商品、通信販売のカタログやダイレクトメールなどが大量にないか
 ・生活費が不足するなど、お金に困っている様子はないか
 ・預金通帳などに不審な出金の記録はないか

②変化に気づいたら声をかけ、経緯を確認。消費生活センターなどに相談する
  《トラブルを防ぐために》
 ・地域の見守り活動や、成年後見制度の利用も検討する
 ・市販の通話録音装置や、不審な電話番号からの着信を拒否する装置を使う
 ・認知症などの症状があれば、トラブルに備えて医師の診断書を得ておく


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