NHKこころの時代 シリーズ 禅僧ティク・ナット・ハン

こころの時代 シリーズ 禅僧ティク・ナット・ハン

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第一回「怒りの炎を抱きしめる」
2015年4月5日 ETV

世界的影響力のある禅僧ティク・ナット・ハンの教えに耳を澄ます2回シリーズ。第1回は、紛争や対立、差別などの「怒り」をどう変容させたらいいのか、人生からひもとく。

真髄は、ブッダの教えに基づく「マインドフルネス(今ここに存在する自分に気づく)」。さらに、自と他の区別をなくすことで、怒りを静め、社会を変えることができると説く。その原点は、ベトナム戦争にある。教えを受けた高僧の焼身や弟子の殺害に苦悩し、暴力で対抗することなく慈悲の境地に至る。そして、キング牧師と共鳴、国際社会を変革していく。88年の波乱に富んだ人生をたどりながら、その教えに迫る。

第二回「ひとりひとりがブッダとなる」
2015年4月12日 ETV

世界的影響力のあるベトナム人禅僧ティク・ナット・ハン、2回シリーズ。第2回は、自分を見失わずに生きる。ひとりひとりがブッダとなり目覚めていくことの大切さを語る。

教えの真髄は、ブッダの教えに基づく「マインドフルネス(今ここに存在する自分に気づく)」。競争社会の中で、見失いがちな幸せや命への感謝。そこで、立ち止まり、苦しみをも含めて、自分を受け入れることの大切さを説く。そして、大切な人を失った現実をどう受け入れたらいいか、語る。「no birth,no death(すべての命は死ぬことなく、姿を変えて生き続ける)」。生死を超えた慈しみの世界を見つめる。

【出演】ベトナム人禅僧…ティク・ナット・ハン
【語り】山根基世

【出演】第二回、日本人のみ列記
 翻訳家、精神保健福祉士…島田啓介、ティク・ナット・ハン『ブッダの幸せの瞑想【第二版】』(共訳)出版社: サンガ
 批評家…若松英輔
 僧侶(光照寺副住職)、社会慈業委員会ひとさじの会事務局長…吉水岳彦


・禅僧 ティク・ナット・ハン(釈一行)
 88歳 ベトナム出身、16歳で出家、後にフランス亡命 
 「歩く瞑想」、「プラムヴィレッジ」(Plum Village、フランス南西部の拠点)1982年~

この禅僧は良く知られている存在で著作も多数、翻訳もあり私も所蔵している。今回、NHKが2回シリーズで特集したが、とても珍しいことだ。ティク・ナット・ハン師は、2014年11月に脳出血で倒れて現在療養中という。このNHK番組のためのメッセージはなく、療養中の現在の姿は撮影されていない。どのような経緯で取り上げられたのか興味は起こる。

第一回は資料映像を構成し、その教えの源を示し、第二回は師のもとに集う人たちのインタビューを含めてさらに教えを示した。インタビューに応える人は、語っているところを短く適所に入れて構成されている。また資料映像は、この共同体での法話や各地でのリトリート(瞑想合宿)で収録されたものだろう。その日本語訳は、かなり言葉を補ったもので恣意的に抜き出したものだ。

内容を詳述することはできないが感じたことを列記し、師の業績を考えてみたいと思う。

師の考え方は、他の瞑想を大事にされる方とほぼ同じであり、やり方として「歩く瞑想」などがあるが、それは日本の禅なども取り入れておりブッダの修行の一環として捉えることができる。「マインドフルネス」(今ここに存在する自分に気づく)という、瞬間瞬間を生き切ることが、幸せや自由の鍵となることを教え、実践を求めている。

その発想は、私の考察・研究対象たるアントニー・デ・メロ師のそれに類似し、人間を縛る怒り・暴力・恐怖の源泉を見つめること=「自己を見つめる気づき」が、その解放に役立つということだ。

パソコン・携帯用アプリなどで、瞑想を誘発するものがあり、私も入れているのだが、それには鐘の音が一定間隔で入るものもある。番組では、「マインドフルネス・ベル」(”気づき”の鐘)と日本人の出演者が語っていた。鐘の音とともに、行っている行為中に、いま・ここに存在することを確認することを繰り返すことで、気づきを日常生活にまで広く感じるという配慮だろう。これはありがたり用い方で、単に時間を知らせるだけの鐘の音とは違った意味を持つ。ボーンっと鳴った時に、今していることを一瞬緩めて、いま、何をしどのように感じているのかを確認する、それが「Here and Now」を感じることになる。

気づくことで意識の変容が起こる、実はデ・メロ師も多くのページを割いて、このことを書き残している。気づくだけで大丈夫なのか、大事なことは行動ではないかという意見もあるだろう。気づくとは、自分がどのような人間であり、どのように教育され、どのように反応し、何を好み・嫌い、どのような状況が得手・苦手であり、どんな思いを抱いているのか・・・それを、すべて批判なくありのままに見るだけ、それだけなのです。それを批判したり反省したり、思い直したりする必要もなく、ただ見つめるだけで、すっと自分を客観視できるのです。ただ、それだけで大きな転機を迎えることになります。

ティク・ナット・ハン師も、それを師なりの表現や詩を通して語っているだけです。ただ、それ以降のあり方は、指導者によって変わることでしょう。ティク・ナット・ハン師も、サンガ(共同体)の重要性を説き、自らも拠点として活動をしています。

この2回の放送で、世界各地から教えを受けたいという老若男女が集っています。私は、それを見るとマザー・テレサの神の愛の宣教者会、テゼ共同体、ラルシュ共同体などなど、祈りと生活と音楽と瞑想の集団を思います。このような真面目に悩む人たちがおり、インドや欧米に出かけて行き教えを乞うという状況は今も昔も変わらないものだと感じます。問題は、師から本当に学ぶことができるか、師から離れることができるか、自ら生き方に反映させることができるかでしょう。それができないと、結局は師の存在が捉われになり、師のもっとも恐れることになるのです。

そして最大の課題は、「ひとりひとりがブッダとなる」であり、私もこのブログで、「ひとりひとりがイエス・キリストとなる」必要性を記してきましたが、同様なことなのです。これが理解でき、自らが大いなるそのものであると分かった時に、師も弟子もなく、生死の区別もなく、物質と非物質の垣根すらどうでもいいこととなるはずです。

残念ながら、このような共同体の活動が世界各地で無数にあるものの、現実社会を牛耳っている政治・経済活動に大きな影響を与えることができていないことです。ただ敢えて言えば、イエス・キリストもブッダも、究極的には社会変革を目指したわけでなく、あくまでも内心あり方を変えること、それも人間本来の価値を見つめることが、どんな政治・経済体制であってもまっとうに生きるコツであることを伝えていると感じます。

誰もが深い瞑想を体験し己を律することができないのが事実であり、多くの人たちは社会現象に右往左往し、社会や隣人を恨んで生きていくしかないのです。ただ、ほんの一部の人たちには、瞑想的な思考を得て、人間の真実を知ることで、怒り・暴力・恐怖のもとを知ることができるのみです。万人に開かれている教えであっても、なかなか把握できないという問題は残ったままです。

また瞑想ビジネスと言えるものがあり、分かったようなことを書いて、悩み相談やグッズ販売などで騙す人たちも多く存在します。インターネットで「瞑想」と検索すると、怪しげなものが多数出てくるはずです。いろいろと比較しながら見れば、どのような謳い文句で何をさせようとするのかが分かると思います。この分別ができないならば、そもそも手出しすることは止めた方がいいと思います。それほど精神世界は危険な場所でもあります。瞑想を説く書籍は多くありますが、超人的な体験を記したものは避けた方がいいでしょう。

ただ、あなたの周りにも、ティク・ナット・ハン師に値する導師が必ずいます。それを見極めて教えを受けて、自ら生きながら考えるしかありません。その道は簡単ではありませんが、求めれば必ず開けていくものと私は確信しています。

ティク・ナット・ハン師を通してでも、また別の導師でも、宗教的な古典からでも、深く学ぶことは可能なのです。それをする気持ちを持ち、探求心を持って、自分自身を見つめる方法を探ることです。その行きつくところは結局は同じ結論となると思います。こうした導師との出会いがありますように、と祈らずにはいられません。(了)


参考
ティク・ナット・ハン師の著作をいくつか出版しているサンガ(出版社)に、今回、第二回に出演された方の出版本があり、リンクとして次のページがありました。

ティク・ナット・ハン マインドフルネスの教え
ティク・ナット・ハン2015 来日招聘委員会  http://tnhjapan.org/

現在、病気療養中のティク・ナット・ハン師に代わって、全世界のセンターで指導をされている師の高弟たち(33名の僧侶団)が来日予定。4月下旬から5月上旬にかけての来日ツアーのイベント詳細は上記から。

つまり番組放送は、このイベントに向けての何らかの意味がありそうだ。それで氷解できそうだ。無料のネット中継もあり・・・

マインドフルネス・アワー
 どこかで誰かとマインドフルネス。

日時:2015年5月10日(日)

16:00 ネット中継放映開始
 「ティク・ナット・ハン&プラムヴィレッジ僧侶団来日ツアー2015」振り返り映像等放映。
16:20 ネットライブ中継(at聖路加国際病院)
 「マインドフルネス・アワー」放映開始
 プラムヴィレッジの僧侶から、皆様へのメッセージと、マインドフルネス瞑想指導をしていただきます。
16:30 ネット中継終了

Ustream録画 ⇒ http://www.ustream.tv/recorded/62098242


4/29講演会時のチャンティング映像です。
https://www.youtube.com/watch?v=1HXV3DOVtvU&feature=share
〜thich nhat hanh movie〜 ティク・ナット・ハン師のお弟子さん達によるチャンティング 〜生演奏〜

ティク・ナット・ハン&プラムヴィレッジ僧侶団来日ツアー2015」振り返り映像です。
https://www.youtube.com/watch?v=hecw3976LlU
4月10日用映像



追記
非常に稀だが、放送されたばかりの同番組が総合テレビ・深夜帯でアンコール放送となる。

しかも高弟らの日本ツアーの最終盤にあたる時期であり、作為的なものだろう。

2夜連続!Eテレ「こころの時代」アンコール

こころの時代・選 禅僧ティク・ナット・ハン 第一回「怒りの炎を抱きしめる」
[総合]2015年5月7日(木) 午前2:45~午前3:45(60分)

こころの時代・選 禅僧ティク・ナット・ハン 第二回「ひとりひとりがブッダとなる」
[総合]2015年5月8日(金) 午前2:20~午前3:20(60分)


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