落語:与太郎戦記~戦場にかける恋(春風亭柳昇)

日本の話芸~珠玉の名演セレクション~-第二日-
2012年1月1日 NHK

これまで放送した番組の中から、五代目春風亭柳昇の落語「与太郎戦記 戦場にかける恋」と、二代目神田山陽の講談「名人小団治」を再放送する。

「日本の話芸」が始まって、ことしで20年。これまで数々の名演をお届けしてきた。そこで今回は、その中から、五代目春風亭柳昇の落語「与太郎戦記 戦場にかける恋」と、二代目神田山陽の講談「名人小団治」をアンコール放送する。


・NHK-Eテレで放送されている日本の話芸において、過去に放送されたものに「春風亭柳昇 与太郎戦記」があり録画を残してある。

個人的に柳昇師匠の創作落語が好きで何度も同じ話を聞きながら、話芸を堪能している。師匠のとぼけた風采と話し方は気持ちを和ませるとともに、粋な面持ちを感じさせる。

この与太郎戦記は、師匠の創作落語のなかでも異質さを放つ。それは自身の従軍記をもとにしたもので、戦争の日常を面白おかしく語ると共に、戦友の死や窮地に陥った状況を淡々と語っていく。じ~んと感じるのは、それが事実に基づいているからだろう。

師匠にとっては、戦争体験は負のものではなく戦争に対する批判は全く感じられない。その時代の多くの人たちの持つような純朴な使命感を持って、お国のために一旗揚げるという雰囲気を持っている。

ただ戦争末期になってくると戦争のもつ矛盾が露呈し、多大な物量を誇る敵国に手向かうこともできず逃げ惑うような軍隊行動もきちんと入っている。

インテリの多くは戦争に矛盾を感じながら従軍経験も少なく亡くなっていったのだろうが、師匠のような出世しても下士官にもなれない人たちとは思いは少し異なるのだろう。

話のなかで、死ぬことは怖くないが死に際に勇敢であったことを家族に伝えてほしい、そして国のために死ぬことを誇りに思うことに矛盾はなかったようだ。それは多くの兵士の心情だったのではないか。

師匠が負傷し入院した病院で看護婦に恋をして歌を送ったというあたり、創作っぽい点もあるだろうが純朴な感じがする。

少しネットで調べて、この落語の一部にもなった師匠の従軍記が書籍化されていること、またフランキー堺による映画化、また民放ドラマ化されていたという情報も知った。

興味ある方は文庫化されているものをご覧頂きたい。なお、この落語そのものはインターネット動画サイトで見ることは可能だが、NHK放送の音声部分を使用しており、高座風景は入っていない。


春風亭 柳昇 著   筑摩書房刊

与太郎戦記 (ちくま文庫) 2005/2/9
陸軍落語兵 (ちくま文庫) 2008/5/8
与太郎戦記ああ戦友 (ちくま文庫) 2011/2/8


春風亭 柳昇
 1920年東京生まれ。本名秋本安雄。第二次世界大戦に陸軍歩兵として従軍。六代目春風亭柳橋の長男と戦友だった縁で、復員後の1946年入門。柳之助で前座。二つ目昇進で柳昇。1958年真打ち。出囃子は「お前とならば」。新作落語を得意とした。
 日本演芸家連合会長、落語芸術協会理事長などを歴任。1982年芸術祭優秀賞受賞、1990年勲四等瑞宝章受章。2003年6月、胃がんのため没。享年82歳


映画
与太郎戦記
 劇場公開日 1969年7月12日
  フランキー堺、南美川洋子、水木正子、露口茂、春風亭柳橋、柳亭痴楽
続・与太郎戦記
 劇場公開日 1969年9月13日
  フランキー堺、伴淳三郎、若水ヤエ子、長谷川待子、南美川洋子
新・与太郎戦記
 劇場公開日 1969年12月27日
  フランキー堺、伴淳三郎、船越英二、南美川洋子、川口英樹
与太郎戦記女は幾万ありとても
 劇場公開日 1970年4月18日
  フランキー堺、長門勇、玉川良一、長谷川待子


参考  創作落語例

春風亭柳昇「課長の犬」


参考 DVD化

NHK DVD「日本の話芸」特撰集 -ことば一筋、話芸の名手たちの競演会- 落語編二

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販売元: NHKエンタープライズ
DVD発売日: 2006/11/23

 (十代目)桂文治 『禁酒番屋』
 三笑亭夢楽 『三方一両損』
 (五代目)春風亭柳昇 『与太郎戦記 戦場にかける恋』
 (二代目)桂文朝 『紙入れ』


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