「御霊前」と「御仏前」の違いは?『鳩居堂のしきたり』が読まれる社会風潮

「御霊前」と「御仏前」の違いは? お見舞いに「現金」は失礼? 『鳩居堂のしきたり』が読まれる社会風潮
2014.8.30 産経ニュースWEST[関西の議論]

 「御霊前」と「御仏前」はどう違う?お彼岸におはぎを食べるのは?お見舞いに現金は失礼? 知っているようで知らない日本の「しきたり」をまとめた「鳩居堂(きゅうきょどう)の日本のしきたり豆知識」(1620円、マガジンハウス)が10万部を超えるヒット本になっている。聞きたくても聞けない冠婚葬祭の決まり事や季節の風習、古来のしきたりなどを簡潔に写真入りでまとめているのが人気の理由。生活のデジタル化や少子高齢化が進む一方で、人と人とのつながりを大事にしようとする近年の社会風潮も影響しているようだ。(山上直子)

出版社も驚いた

 「想定外の売れ行きで、正直びっくりしています。発売は昨年の4月ですが、今年8月現在で21刷、10万9000部に。メーン読者は50~60代ですね」(マガジンハウス社)

 出版社も驚くヒットのワケは、日本古来のしきたりが薄れつつあるなかで「これくらいは知っておきたい」という中高年のニーズにうまく合致したから-といえそうだ。子供の結婚や孫の誕生…と新たな節目を迎えた世代が、昔ながらのしきたりに再び目を向け始めたことも大きい。

不祝儀の心得

 急な葬式で不祝儀袋を買いに走るのはままあることだが、中に「御霊前」「御仏前」の表書きの紙が…。「どっちも同じ」と思っていたら大間違い。同書によると、亡くなってあの世とこの世をさまよっていた霊が成仏するのが四十九日、つまり、通夜や葬式など亡くなってすぐは「御霊前」、四十九日以降の法事などでは「御仏前」を使うのが正しいという(一部宗派は除く)。

 最近は「お香典は辞退」という葬儀も少なくないが、「香典に新札は避ける」というマナーを耳にしたことはないだろうか。かつては、不幸の準備をしていたととられるから旧札で…という理由で避けることが多かったのだが、新札でも手に入りやすくなった昨今では、新札を使うことも多くなった。「気になる人は折り目を一つつけて」というアドバイスに、なるほど。

お月見だけじゃダメ?

 9月8日は中秋の名月。ススキを飾ってお団子を食べて…と風流なお月見を家族で楽しむこともあるだろうが、約1カ月後の旧暦9月13日(今年は10月6日)に「十三夜」をセットで愛でるのが昔ながらの風習だったことはご存じだろうか? どちらかが欠けることを「片見月」といって嫌ったそうである。

9月の行事といえばもう一つ、「お彼岸」がある。23日の秋分の日を中心に墓参りをする風習は今もさかんだが、なぜぼたもちやおはぎを食べるのか? お彼岸は3月、9月に行われるがその時期に咲いている花、つまり春はぼたん、秋は萩にちなんでぼたもち・おはぎが供えられるようになったのだという。

 そのほか、子供の入園・入学祝いにお返しはいらないって本当?▽黄白(きじろ)の不祝儀袋はどう使う?▽病気や災難のお見舞いは現金でもいい?▽喪中の年賀欠礼状が来たら年賀状はどうする?▽子供の十三参りって何?-など。知っているつもりで実は知らなかったしきたりのノウハウが満載だ。

薄れゆくしきたり、風習に危機感?

 鳩居堂は江戸時代の寛文3(1663)年、京都・寺町に薬種商として創業した老舗。お香や墨なども扱うようになり、明治維新後に東京に進出した。現在は和の文具店として、今も寺町にある京都鳩居堂本店、銀座の東京鳩居堂東京本店が有名だ。

 同書のきっかけは、担当編集者が鳩居堂で買い物をしたときに手渡された「豆知識しおり」から。同社の創業350年に合わせ、その豆知識をまとめる形で出版された。

 実はこうした冠婚葬祭のマナー本は定期的にヒット作が出ている。古くは昭和45年の「冠婚葬祭入門」(塩月弥栄子著)がミリオンセラーに、平成21年には百貨店の伊勢丹が出版した「伊勢丹の最新儀式110番」が話題になった。時代とともに薄れていくしきたりや風習に、時折、日本人の危機意識が芽生えるのかもしれない。


・こうしたマナー本やマナー講習など、冠婚葬祭作法のいわれなど説明をされるとヘェ~って誰もが思ってしまうことだろう。時代は簡素化、外部サービス化の時代にあって型通りのものに対する思い入れが極端に薄れてしまった。

ただ日本社会では、まだまだ世間意識があり礼儀知らずと言われたくないという想いがあるのだろう。また、盆暮れの付け届けがきっと功を奏するという想いもあろう。

社会の習慣・風俗は移り変わっていくものであり、それは流行と呼べるものになってしまっており昔ながらの伝統を守ることに力点を置く生き方が賛美されない時代になった。

テレビのバラエティ番組などに登場するタレント・歌手らの著しい社会常識や教養の不足を見つつ、それらは単に笑いを誘うための演出というよりも、本当に知らないのだということを思い知らされる時に、日本人に欠けてしまった大事なものに気づく。

日本人だけが平和ボケして緊張感がないわけでなく、どこの国でも庶民が難しいことを日々考えているわけではなく、スポーツ・芸能・グルメ・旅・健康情報に右往左往していることは間違いないことだ。

冠婚葬祭の伝承も含めて、より根無し草的に世の流行に浮かれ騒ぐ国民が、原発・戦争・外交・国政などにきちんと向き合えることもなく、誰かに責任を押し付ける生き方を止めない以上は、それなりの国としての評価しか得られないことになるのだろう。自分からできることをするという発想がないことが、この国の不幸をさらに続けることになろう。


鳩居堂の日本のしきたり 豆知識

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単行本(ソフトカバー): 208ページ
出版社: マガジンハウス (2013/4/4)

監修:鳩居堂 (きゅうきょどう)  http://www.kyukyodo.co.jp/index.html

1663年(寛文3年)、京都寺町の本能寺門前に薬種商として創業。
現在はお香、書画用品、はがき、便箋、金封、和紙製品の専門店として、
京都鳩居堂、東京鳩居堂、支店に東急百貨店東横店の渋谷店、
京王百貨店の新宿店、横浜駅地下街ポルタの横浜店、東武百貨店の池袋店、
東京スカイツリータウン・ソラマチ店の店舗がある。


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