人生いろいろ:大組織と個人

† 新型万能細胞の一連の問題だが、当事者たちが勝手に記者会見を開きドロ沼状態となっている。大組織、管理職、研究者らが、自らの保身をめぐって主張を繰り返している。これに対して世の中の見方もさまざま、それぞれに賛否の意見を持っているに違いない。専門家は立場もありあくまでも科学常識に立脚して意見を述べるし、科学の世界の疑義はそこで解決してもらいたいものだ。

‡ 一番罪作りだと思うことは、先進しているips細胞にケチをつけ、治療法・創薬に期待するしかない難病患者らを深く傷つけたことだろう。大きな期待を抱かせて梯子を外し自らの未熟さで全てを済まそうとすることは人間としてどうかと思う。そして大組織と一個人の闘いに映っているが、以下の記事にあるように、同じ職場にいる仲間たちが全ての資料を共有し分析・検討し事の本質を突きつめることが科学者のあり方に違いない。責任は、それぞれが起きていることに対して真摯に向き合い国民に分かりやすく説明する以外にはないだろう。科学者もムラ社会という指摘もあり、これが日本の科学研究の限界と評価されることはさみしいことだ。


識者が見た笹井氏会見 まるで「翻訳家宣言」
2014年4月17日 産経新聞

 3時間以上にわたって行われた理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹・副センター長(52)の会見。STAP細胞の存在に自信を見せつつも、不正とされた画像や実験ノートを見ていないなど、釈明する場面も目立った。研究者や識者は、この会見をどう見たのか。

 ■東大医科研特任教授・上(かみ)昌広氏

 会見の始めに、笹井芳樹氏が「私が参加した時点で実験やデータ分析は終了しており、私の役割は論文の仕上げだった」「論文の文章を俯瞰(ふかん)する立場だった」などと語ったことに言葉を失った。会見は完全に失敗だった。「私は翻訳家です」と堂々と宣言したようなものだ。

 笹井氏は小保方晴子氏とともにデータをまとめて論文を執筆し、研究を統括してきた中心人物だ。副センター長として、博士号を取ったばかりで実績がない小保方氏をユニットリーダーに抜擢(ばってき)した張本人でもある。山梨大に行った若山照彦氏の後を引き継いで、研究をプロデュースしていたはずだ。例えるなら、俳優が不祥事を起こしたら、プロデューサーが逃げちゃったようなもの。若手を抜擢し、競争させる。良い結果が出たら会見にも出席してPRするのに、悪い結果が出たら自分は翻訳家だと言って逃げる。これでは下にいる研究者は救われない。

 科学的な部分については笹井氏の説明は正しかったと思う。「小保方氏に実験ノートを持ってこさせることができなかった」という説明についても、研究者同士ならあり得る話だと理解はできる。

 結局、「未熟な研究者」である小保方氏を抜擢した時点で、笹井氏には人を見る目がなかったということだ。若いうちから認められてきた笹井氏の経歴は立派だが、研究者としての能力と、人事権を持つ大きな組織の幹部としての能力は別。その責任を明確に認め、一研究者に戻って出直すと言えばよかった。

 一連の問題から理研が立ち直るのは難しいだろう。理研はSTAP細胞を再現する検証を続けるが、検証結果にかかわらず、信頼を取り戻すのは容易ではない。

 残念だが、こうした不祥事はどこの機関でも起こり得ることだ。ただ、研究者が不正を起こしたときに、責任者がきちんと責任を取ることが再発防止につながる。悪事はばれ、相応の報いを受けるとなれば歯止めになる。そうやって科学不正にひとつひとつ向き合っていくしかないだろう。

 ■組織論の専門家・大関暁夫(あけお)氏

 これまでのいきさつを見ても、理化学研究所は単なる科学者の集まりになっていて、組織としてまったく機能していない。そもそも小保方晴子氏、笹井芳樹氏という同じ組織に属する人間が別々に会見をすること自体が、一般的な感覚からするとおかしく思える。

 このままでは、笹井氏の会見での発言にまた誰かから反論やコメントが出てきて、まともなコミュニケーションができなくなってしまう。

 本来なら理研が関係者を一堂に集めてそれぞれの意見を聞き、持っている資料を集めて論点整理することが必要だ。その上で、研究者の間に異なる認識があることも含めて表に出すべきだ。それが組織マネジメントというものだ。それができないと、根拠の薄い醜聞や噂話ばかりが出回ってしまう。

 理研には、最初にSTAP細胞についての会見をした責任がある。研究機関は一般企業とは違うという指摘もあるが、理研は行政が担っていた分野を民間のような効率重視で運営していくことが求められる「独立行政法人」だ。独法として統率力を持った適切な運営が求められているわけで、法人組織としての意識を持たなければいけない。


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