NHKスペシャル 追跡!世界キティ旋風のナゾ

NHKスペシャル
追跡!世界キティ旋風のナゾ
2012年5月12日放送 本編73分

製造業に替わる『新・ニッポンブランド』として期待される日本のコンテンツビジネス。しかし、ゲームやファッションなど「文化」は注目されても「商売」には結びつかず、コンテンツ産業の海外輸出額は、国内市場の5%にとどまっている。

そんな中で、世界を相手に躍進を続けているのが、キャラクター・ブランド「ハローキティ」。社会主義国家やイスラム国家、軍事政権下の国まで含め、創業からわずか一代で進出した国と地域は「109」。ライセンスによるビジネスで、営業利益150億円を稼ぎ出している。その成功の秘けつは、戦後日本の消費行動が生んだキャラクターならではの「自由さ」を売りにしたことだった。

さまざまな世界の「壁」に苦しみながら、挑戦を続ける日本コンテンツ産業。「ハローキティ」をはじめ、さまざまな企業の苦闘の様子を追い、『新・ニッポンブランド』が世界で生き残っていくために必要なモノは何かを探っていく。

語り:ジョン・カビラ、森田美由紀
ディレクター:渡辺隆文、宮岡健司
プロデューサー:袴田悦子、菅原英雄


放送を終えて
世界109の国と地域に拡がるハローキティ。一年間に稼ぎ出す利益は150億円。カワイイだけじゃない“キティちゃん”の秘密を探った今回の番組。私たちは、キティに負けじと世界15都市を駆け回り、徹底したヒアリングを敢行しました。

中東や欧州、北米での調査を通して判明した購入動機の第一位は「ピンクだから」。散々調べた結論が「ピンク」。愕然としましたが、実はここに、周到なビジネス戦略が隠れていました。かつて、ピンク色はベビー用品のみに使われ、キャラクターにはタブーとされていました。そんななか、日本でキティの担当デザイナーが、7年連続でピンクを猛プッシュして、日本でピンクを浸透させていました。さらに、いまや世界各地にいるピンク好きのキティコレクターたち。彼女たちの存在は、シックなデザインが多かった海外でも、ピンクが受け入れられた何よりの証拠です。

そして、海外向けのデザイン戦略を練るイタリアのデザインルーム。ここでもピンクが主力なデザインとして活用されていました。大ヒットの深層に迫るには、とにかく人の話を聞くこと。その重要性を改めて実感した番組でした。(ディレクター 渡辺隆文)


・キティちゃんのデザインが、デイズニーキャラクターにも負けずにあちらこちらで見られるようになっている。この番組を見ようと思ったことは、単純にそうした現象を追ったものだと思っていた。

しかし、その内容はコンテンツ産業のあり方として世界の一石を投じたサンリオの戦略があったという驚くべき内容だった。単に猫のイラストが「かわいい」ので世界に認められて広まったわけではなく、そこには今までとは違った戦略があった。

番組前半は、こうしたキティちゃんの使用権をめぐるライセンスビジネスについて報告された。私も好きでディズニーキャラクターの小物を買うようにしているが、これらもディズニーが許可した肖像を用いて第三国で製造されているものだ。

サンリオのそれは、ディズニーらと決定的に違い、肖像の改編が大きく可能となる契約を結んでいることだ。サンリオの世界にある現地事務所が、その国柄や好みに合わせたキティちゃんのイメージを採用しデザインを変更している。

その自由さが、どのような商品にも合うことになる。猫を愛玩する人たちは世界中に多いからだろう。その多様性が新たな商品イメージを広げていく。

この切っ掛けとなったのは一人の若い取締役の発想であり、今まではキティちゃんのイラストの入った商品の輸出(物販)を行っていたことから大幅変更である。それにより現地事務所のデザイナーらの意見も取り入れ、日本からの関与の少ないやり方にしたことが売り上げを大きく伸ばしている。

番組では、お隣韓国の躍進と比べての日本のコンテンツ産業の弱さを指摘した。番組では指摘されていないが、例えば日本のアニメ制作現場は低賃金での3K職場であり、制作者たちが夢を抱いて仕事ができている訳ではない。

さて番組後半では、キティちゃんのキャラクターそのものの変更に関わる話であり、このキャラクターだが実は一人のデザイナーの発想から従来のキティちゃんイメージ戦略を変更して、大きく飛躍したことが紹介された。

それは番組のディクレクターが後記で書いているように、ピンクを基調としたイメージを採用したことであった。日本を皮切りにして世界の女性はピンクを好んだのだ。それがヒットの要因となった。そして何にでも合うことが洋服から小物まで幅広い用途に採用されるキャラクターとしての資質を備えていた。

以上、キティちゃんの世界的な浸透の秘密の一端が解き明かされた気持ちがする。

疑問に思ったことは、こうした指摘は番組が取材で初めて明らかにしたことなのか、それとも成功秘話としてマニアの間では周知されている話なのかが分からなかったことだ。

そして73分というNHKスペシャルにしては中途半端な構成時間。途中にサンリオの採用した方法を問うクイズ形式問題を複数出したり、サンリオデザイナーの開発秘話を再現映像にしたりしたことの意味は何なのだろうか。

これがなければ通常の49分に収めることも可能かもしれない。ガングロ女子高生をわざわざ再現させる必要もなく劇団俳優さんも可哀想かも!? 

NHK的には、サンリオの宣伝に終始できない公共放送のとしてのスタンスがある分だけ余分な情報(吉野家、ユニクロ等海外展開)を入れたことで密度が落ちたかもしれない。民放など、例えばテレビ東京「カンブリア宮殿」のような一企業・一経営者の方がスッキリとする。

ディズニーキャラクターが厳しいルールのもとで商品化されていることに比べると、遥かに商品化される可能性が大きくなり期待が持てる。ただサンリオという一企業の成功話に終わってしまいそうな予感がする。

今年もヒット予感されるスタジオ・ジブリ作品だが、老舗・日本テレビと後発・NHKでのドキュメンタリー戦争は続きそうだ。アニメがヒットするだけでなく、関連商品に加えて人気のイマイチであるドキュメンタリストにとっても一旗揚げるチャンス。

できれば、そのドキュメンタリーの厳しい現実をドキュメントする番組も制作してほしいものである。


<参考>
NHKネットクラブ あさいちサポーター
ほっとかわら版第17号 若手ディレクター奮闘記(渡辺隆文)
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