NHKちきゅうラジオ「世界が注目 和楽器の継承と道路計画」

NHKちきゅうラジオ「世界が注目 和楽器の継承と道路計画」
柏倉康夫(放送大学名誉教授)
2013年6月2日放送 NHKラジオ第一

・和楽器である篳篥(ひちりき)のリード部分(ヨシ)の日本での原産地は限られており、その貴重な群生地(高槻市、淀川河川敷)に新名神高速道路建設計画があり、その保存について国際的な関心が払われているということだ。

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番組では、その概要と海外でも関心を読んでいる例として、ダブルリードを使う演奏家団体からも批判の声が寄せられているということを伝えた。

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それは演奏そのものに大きな影響を与える。調べてみると一部の演奏家の意見ではないことは、呼びかけ人らの顔ぶれを見ても分かった。

こうしたことは全く知らなかったのでかなりびっくりとした。リード楽器にとっては、その発音部であるリードの良し悪しが楽器の良し悪しとともに大事なこと。限定された地域のものしか使われないこともあり得ること。宮内庁雅楽部も当地のヨシしか使用しないということだ。

この道路工事の背景について、別の報道で分かったことは、東日本大震災を受けて非常時の代替ルートとして凍結されていた建設計画が再開に向けて進んでいくということらしい。

その高架橋を作ることで、自然に対する影響からヨシの原が多大の影響を受けることが予想されるということで、NEXCO 中日本(中日本高速道路株式会社)に対して宮内庁をはじめとして関係者の要望が出されているという。

一方で、一般的に楽器の製造については原材料の不足や職人の育成など多くの問題が含まれいる。自然素材を使用する楽器は影響が大きい。日本の雅楽には1000年以上の歴史があり、それを絶やすことの危惧がある。ただ楽器は時代とともに変遷することも事実であり廃れてしまった楽器も多い。広く文化をどう捉えるか、伝統とは何かを考えるきっかけとなることが期待される。

僅か7分程度の報道であったが、さらに調べると、こうしたこと一つからも私たちの生活のあり方をを考えさせられることになるだろう。


SAVE the 鵜殿ヨシ原~雅楽を未来へつなぐ~  http://www.save-udono.com

International Double Reed Society  http://www.idrs.org/


雑誌「Pipers(パイパーズ)」381 2013年5月号 掲載
国際ダブルリード協会 マーティン・シュリング会長

日本のダブルリード奏者の皆さんへ
2013年3月7日

IDRS(国際ダブルリード協会)会長
Martin Schuring

篳篥(Hichiriki)のリードの良材の産地が失われる可能性があるという悲劇的なニュースに接して衝撃を受けている。1200年以上も前から、最高品質の篳篥のリード材は、京都から大阪へ流れる淀川の河川敷で収穫されてきた。しかし、高速道路の建設工事により、この絶対不可欠の資源が永久に失われようとしていると聞く。

雅楽演奏に欠かせない重要楽器である篳篥のリード資源が破壊される。その衝撃の深刻さは私たちにもよく理解できる。葦原の破壊は雅楽の演奏と日本の音楽文化に決定的なマイナス効果をもたらすであろう。

西洋音楽のあらゆるリード管楽器は(古代のバグパイプをも含めて)Cane(ケーン=葦=arundo donax)で作ったリードを使う。最上のリード・ケーンは、フランス・ヴァール地方の数か所でのみ育つ。世界中のリード楽器プレイヤーは皆が皆ヴァールに自生するケーンで作ったリードを使っていると言っても過言ではない。もし、このヴァール地域の資源が破壊され全滅すれば、西洋音楽文化に壊滅的影響を与えることだろう。私たちが淀川河川敷に育つ葦の危機を他人事とは思えないゆえんである。

雅楽は1200年以上の歴史と伝統を持つ芸術形式であり、日本の歴史と伝統そして文化の象徴でもある。そして完璧に保存されてきた雅楽とその熟練の演奏技能は日本独自のものであり何としてでも保全されなければならない。雅楽は1000年以上生き続けて来た保護すべき宝であり遺産である。高速道路工事で雅楽に必要不可欠の産地を破壊するのは聖像を破壊するに等しい悲劇である。

IDRSは、ダブルリード奏者、楽器メーカー、熱狂的ファンで構成される世界的規模の組織で、会員数は世界50ヶ国に及ぶ。私たちは日本の宮内庁、民族音楽専門家、雅楽の愛好家、ダブルリードの同志たちと連帯し、淀川河畔~篳篥の魂が宿っている~の保護と保存の要求を断固として支持する。(翻訳:小関馨子)



鵜殿のヨシ原:「新名神」で消滅も 見直し署名提出へ
2013年11月16日 毎日新聞

 ◇雅楽の管楽器「篳篥」の材料に欠かせず

 全国屈指のヨシ群落が広がる大阪府高槻市の淀川西岸「鵜殿(うどの)のヨシ原」が、新名神高速道路の高架橋建設工事により消滅しかねないとして、保全に取り組む市民団体が18日、計画の見直しを求めて約7万9000人分の署名簿を太田昭宏国土交通相に提出する。鵜殿のヨシは雅楽の管楽器「篳篥(ひちりき)」の材料に欠かせない。団体側は「これだけの署名が集まることは環境問題としてだけでなく、雅楽の伝承に対する市民の強い危機感の表れだ」と主張している。

 鵜殿のヨシ原は、平安時代の代表的な文学作品「土佐日記」にも登場する。鵜殿のヨシは茎が太く、それで作る篳篥の吹き口(リード)は、雅楽にふさわしい良質な音色を奏でると演奏家に評価されている。宮内庁の雅楽を演奏する専門機関「楽部」は今も、鵜殿から直接ヨシを買い付けている。

 しかし、1960年代以降、川底のしゅんせつ工事や上流のダム建設などで淀川の水位が低下、ヨシ原の乾燥が進行し、陸生植物に取って代わられるなどしたため、かつて約75ヘクタールあった生育面積が10%程度に減少した。

 今回、新名神の京都府八幡市−高槻市間(10.7キロ)は鵜殿のヨシ原をまたぐ形で高架橋の建設を計画。これまで採算性を理由に着工が凍結されていたが、昨年4月、国交省は事業を認可した。建設主体の西日本高速道路は2023年の完成を目指す。

 これに対して、地元で30年以上、ヨシの保全活動に取り組む「鵜殿ヨシ原研究所」の小山弘道さん(76)らは、高架橋建設に伴い、ヨシ原に水を供給している地下水などに影響が出ると主張。昨年、関西の雅楽演奏家とともに市民団体「SAVE THE 鵜殿ヨシ原」(大阪市)を結成し、署名活動を続けてきた。

 小山さんは「水路を設けるなど長い間かけてヨシ原を守ってきた。雅楽にとって取り返しのつかない事態にならないよう、建設を急ぐべきではない」と主張し、ルートの変更を求めている。

 西日本高速関西支社は、環境アセスメントの一環として植物学や地下水の専門家らによる検討会を開き、工事がヨシ原に及ぼす影響を調べている。同社は「ヨシの保全と建設との両立を目指す」と説明している。【五十嵐和大】


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