NHKスペシャル コンピューター革命 最強×最速の頭脳誕生

NHKスペシャル
コンピューター革命
最強×最速の頭脳誕生
2012年6月3日 NHK総合

地球上の全70億人が一斉に取りかかっても数十日間かかる計算をたった1秒で行うという“世界最速”の頭脳・理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピューター「京」と、人間の言葉を聞いて理解し、人気クイズ番組で全米チャンピオンを破った“世界最強”の人工知能・IBMの「ワトソン」。激烈な競争の末に生まれたこの2つの頭脳は、人間社会を劇的に変貌させる可能性がある。

地球温暖化や津波の被害予測、遺伝子創薬など最先端分野での技術開発のスピードを一挙に短縮する「京」。過年去の出来事をすべて知識として蓄え、経済危機脱出のシナリオを描いたり、症例から、医師に代わって診断を下すなど、人間を記憶から解放する「ワトソン」。両者が目指すところはひとつ、人間を実験や計算、知識の暗記といった単純作業から解放し、より高度な知的活動に専念させることだが、“知性”と呼ばれてきたものをコンピューターが肩代わりするようになった結果、私たちの社会はどう変わるのだろうか。バラ色の未来か、仕事を奪われる悪夢か。

世界各地で進むコンピューター革命の最前線ルポに加え、コンピューターが高度に発達した近未来の東京を舞台にしたアニメも挿入し、変貌の行方を描き出す。

ディレクター:植松秀樹 立花達史



・計算速度世界一を誇る「京」から、人工知能コンピューター「ワトソン」(IBM)と次世代の「セコイア」、日本の研究機関で行われている研究の様子を伝える。

番組では、アニメを使って2020年の日常を描いている。ビッグデータといわれる人類の知識を蓄積し瞬時に計算することで多くの応用が期待されている。

その未来図は、バラ色なのかそれとも…。災害対応、医療の治療や製薬応用など身近な話題から、これらの技術が起こす新しい社会とはどんなものになるのだろうか。

元来コンピューターの得意な分野は大量のデータを決まった計算によって答えを出す機械であったが、「機会学習」という学習機能を付加することで人間に近い判断をできるようになった。

実に大きな話題であるので、想像が膨らんでしまうのだが、SF好きのために、こうした話題は楽しい。スタートレックでは、こうした人工知能と呼べるものが当然とする設定であり、その中で様々な起きるであろう問題を先取りして提示している。

例えば、人間の行けない危険な場所に入って修理をするロボットがあった。ある時、その作業中に問題が起こり結果として分かったことは、そのロボットが仲間のロボットを助けるために犠牲となったということで、彼らを生命体と認めるという内容のエピソードであった。

生命とは何か。私たちは人間を中心に考えているのだが、炭素ベースで骨格を持ち代謝をすることで生きるものが生命だと考えていると思うが、それだけが生命なのだろうか…。こうした問いを、SFの世界では何度も考えさせられた。

最近、プロ棋士と将棋ソフトの対局が認めらて始まっているが、コンピューターソフトの勝利が続いている。こうした身近な話題から、コンピューターの中で様々な再現実験(シュミレーション)ができる利点が大きい。

創薬などは、数限りない組み合わせから最適な化学物質の発見を可能とすることができるという。

番組では、ディリバティブという金融取引で起きた株価暴落のがフラッシュクラッシュ(瞬間暴落)と呼ばれる現象を引き起こしたことを紹介していた。現在では株取引はコンピューターに任せて瞬時の判断で売買されており、最適解を求めることが人間のしない取り引きをし結果として瞬間的に株価を乱高下させたというものだ。

現在でも、遺伝子レベルで将来罹患する病気を予想できる技術があるというが、いろいろな人体データを蓄積することでも人体のシュミレーションは可能となってくるという。

この番組では全く出演しなかったが、「京」の事業をマネージメントした方のNHKラジオ番組を聞いた。その話も大変面白くて、開発の裏話を知ると人間臭いものであると思う。

印象的だったのは、この施設を建設するために、まず第一歩から始めるということだった。目標を定め研究者・技術者を集め、具体的に工期を作って一歩一歩進めていく。その歩みは人間的であり面白かった。シュミレーションすることと現実に作り上げることは大きく違うのだ。

この番組でも、そうした面も伝えても良かったと思ったりする。なぜなら夢のような技術も、実は人間の知恵の結晶に過ぎないとも言えるからだ。

コンピューターが思考力を獲得し人間の上に立った時に、我々はどうなるのだろうか。所詮、有期の壊れやすいちっぽけな存在である人間の価値を認めてもらえるのだろうか。

SF番組でも、どう生きるのか等々の問題に人工知能は答えることができないという筋になっている。それは、過去の文献を網羅しても答えがないからだ。では人工知能は、人間にどう生きるかを指し示すことができるのだろうか。あなたは、将来どのくらい生きて、どのような疾患で亡くなるとは断言できるにしても、明日はこう生きなさいと言うアドバイスができるだろうか。

番組では、国立情報研究所・新井紀子教授のインタビューを通してメッセージを送った。それは、何が大事なのか、何を大切に思うのかという価値観が問われるということだろう。それを判断できるうちは人間は生きていけるのだろう。


(参考)
関西発ラジオ深夜便 ▽明日へのことば                     
「スーパーコンピューターに賭ける」           
理化学研究所“京”プロジェクトリーダー 渡辺貞
2013年3月9日深夜 NHKラジオ第1

理化学研究所 次世代スーパーコンピュータ開発実施本部
 http://www.nsc.riken.jp/index_j.html


追加情報

2位じゃダメ…「京」の100倍スパコン開発へ
2013年5月6日 読売新聞

 文部科学省は来年度から、理化学研究所のスーパーコンピューター「京けい」の約100倍の性能を持つ「エクサ(100京)級スパコン」の開発に着手する方針を固めた。

 2020年ごろまでの完成を目指し、来年度予算の概算要求に概念設計費などを盛り込む。専門家による作業部会が8日、中間報告案をまとめる。

 1秒間に1兆の100万倍回の計算が可能なエクサ級スパコンは、欧米や中国がすでに、20年前後の完成を目指して研究を進めている。作業部会では国際競争の激しいエクサ級スパコン開発への参入が、「科学技術の発展や産業競争力の強化に貢献できる」と判断した。「京」は11年にスパコン計算速度ランキングで世界一になったが、昨年は米国勢に抜かれて3位に後退しており、日本はエクサ級スパコンでの首位奪還を目指す。



スパコン「京」、抗がん剤候補物質を続々発見
2013年8月24日 読売新聞

 スーパーコンピューターの可能性を探るシンポジウム「スパコン『京』の今後はどうなるの?」が24日、東京都文京区の東京大学伊藤謝恩ホールで開かれ、約410人が聞き入った。シンポは理化学研究所(理研)の主催。

 平尾公彦・理研計算科学研究機構長は、昨年9月に本格稼働した「京」の成果として、新たな抗がん剤の候補物質を10種類以上発見したことなどを紹介。新浪剛史・ローソン代表取締役CEOは「スパコンの高い計算技術は、競争力強化や社会問題の解決に不可欠」と期待を寄せた。

 パネル討論ではノンフィクション作家の山根一眞さんら6人が、次世代のスパコン開発について意見を交わした。



<スパコン京>解析速度競う「グラフ500」で1位に
2014年6月24日 毎日新聞社

 理化学研究所は24日、複雑なデータ解析の速度を競う国際ランキング「グラフ500」で、理研計算科学研究機構(神戸市)のスーパーコンピューター「京」が初めて世界1位を獲得したと発表した。日本のスパコンがグラフ500で1位になるのは初めてという。

 一方、スパコンの計算速度を競う「TOP500」も23日に発表され、「京」は前回に続き4位だった。

 グラフ500は、社会で起こる複雑な現象の分析に使う「グラフ解析」のランキング。プログラムを含めた総合的な能力が求められる。半年に1度更新され、京は前回は4位だった。グラフ解析はビッグデータの解析にも利用されるため、研究が盛んになっている。【斎藤広子】



スパコン「京」に迫る危機…電気代高騰、STAP余波など難題が直撃
2015年2月22日 産経新聞

 日本が世界に誇るスーパーコンピューター「京(けい)」が思わぬ難題に直面している。淡路島の4割強の世帯の消費量に匹敵する電力が必要だが、関西電力の度重なる電気料金値上げが直撃。さらに京を運営する計算科学研究機構(神戸市中央区)を傘下に持つ理化学研究所が、STAP問題に伴う予算削減危機に直面している。研究面では世界的成果を順調に挙げている京だが、先行きに暗雲が漂う。

 「中央演算処理装置(CPU)を3万個以上使う計算を行う場合は、事前に消費電力の確認を」

 計算科学研究機構は、関西電力が電気料金を値上げした平成25年春以降、京を利用してシミュレーションを行う研究機関や企業に対し、電力の急上昇が見込まれる場合は、短い時間に計算が集中しないよう呼びかけている。26年度は利用が減る年末年始に一時的に京の運用を停止する準備も進めていたほどだ。

 スパコンの心臓部であるCPUを京は約8万8千個備え、1日約600万円強もの光熱費を消費する。CPUを搭載する計算機は約860台。一度電源を落とすと再稼働には数時間かかるため24時間年中無休での稼働が原則だ。理研によると、年間の消費電力量は一般家庭約2万5千世帯分に相当するという。さらに4月から予定されている関電の再値上げ幅が10%強とすると、単純計算では年間2億円強の光熱費増となる。

 理研は京を冷やすエアコンの稼働調整や館内の照明削減などを実施。また、計算科学研究機構の各部署で予算を削ったり、所属する研究者の学会出張を減らしたりなど涙ぐましいコスト削減に努めてはいる。

 ただ、施設での電力の95%以上は京とその関連設備で使用されており、京の運用に大幅な制限をかけない限り電力コスト削減には限界がある。

 追い打ちを掛けるのが予算の先細りだ。民主党政権時代の事業仕分けで京もやり玉に挙げられ、事実上の凍結と判定されたが、仕分けへの批判もあって“復活”を果たした。だが、27年度は計算科学研究機構の予算が4千万円強削減される見込み。理研元研究員の小保方晴子氏によるSTAP細胞の論文不正問題で理研への風当たりが強まり、文部科学省が理研全体の予算で異例の減額要求したことなどが背景にある。機構は「今後の光熱費対策を考えると頭が痛い」と話す。

 京はかつて計算速度で世界最速を誇ったが、今は4位。政府は京の100倍の計算速度をもつ次世代機を開発中だが、当面は「京頼み」が続くうえ、次世代機は、京よりも消費電力がかさむ。スパコンの運営が立ち往生すれば日本の科学技術振興にかかわるだけに、研究者らの不安も募っている。

                ◇

 【京】 理化学研究所と富士通が共同で開発したスーパーコンピューター。国の主導で世界1位の計算速度を目指して開発が始まり、総事業費約1120億円で平成24年9月、神戸市の人工島・ポートアイランドで本格稼働した。計算速度は1秒間に1京(京は1兆の1万倍)回。脳の神経回路の様子を再現する世界最大のシミレーションなどの学術利用のほか、自動車の車体設計など民間企業の利用も進んでいる。


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