三浦綾子全著作を電子化 10月から配信

三浦綾子全著作を電子化 10月から配信 
2012/9/18 中日新聞 夕刊

 『氷点』『塩狩峠』などで知られる作家・三浦綾子さん(一九二二~九九年)の小説・随筆など全著作(八十作・九十一点)を電子書籍化する「三浦綾子電子全集」の配信が始まる。小学館と三浦綾子記念文学館が共同で発表した。

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 まず十月十二日に出世作『氷点(上下)』と最後の小説『銃口(上下)』を。続いて『塩狩峠』『積木の箱(上下)』『道ありき』など、毎月第二・四金曜に五点ずつを配信。同文学館が所蔵する作家の写真や創作秘話などの収録もあり、愛読者にはうれしい。価格は全作一点五百二十五円。専用電子書籍・パソコン・携帯電話のほか、スマートフォンやiPadなど、ほとんどの端末からダウンロードできる。

 十一日に北海道旭川市内で記者会見が開かれ、『塩狩峠』以後の全著作を口述筆記してきた夫の三浦光世さんが「絶版になっている綾子の約半数の作品を再び読んでもらえる機会を得てうれしい」と話した。また自殺者の増加や3・11などのいまの不安な世相をうけて、小学館の白井勝也副社長も「献身や原罪や自己犠牲というキリスト者の精神を背景にした三浦作品に再び注目が集まっている」と、電子全集刊行の理由を語った。

 今年は綾子生誕九十周年。会見に先立つ文学館訪問でも、震災被災地への「三浦綾子の本を送る活動」が紹介され、「税金に頼らず全国の多くの賛助会員と市民ボランティアの尽力で館を運営している。市民の文学館は市民の手で」との思いが伝えられた。病苦の中で「愛他」の信念を持ち執筆を続けた綾子の生き方だけでなく、死の後も読者や市民らが綾子の精神を受け継いでいることを確認できた。

 綾子と同じく創業九十周年を迎える小学館も「今後とも電子書籍に力を入れ、一九六〇~九〇年代の刊行書籍約千三百点を電子化する予定」という。「三浦綾子電子全集」の刊行そのものは快挙だが、現状ではまだ紙の書籍に愛着を持つ読者が多く、「売り上げも含め電子書籍の普及は手探り」のようだ。 (大日方公男)


・この発表には驚かされた。

電子書籍は、思った以上に伸びてはいないのだが、これからの展開を見据えてのことだろう。彼女の書籍は主婦の友社をメインにして、いろいろな出版社から発売されてきた。晩年は小学館とのつながりが大きかったようだ。

この企画だが、小学館の創設記念と合わせてのようで、堅実な三浦文学を電子書籍化することで今後を占いたいという思惑もあるのだろう。

記事にもあるが、絶版となっている本も多くなっているということでファンには新たな楽しみとなるのかもしれない。そして、この企画では特典として秘蔵写真などを付けるという。

彼女の文学でキリスト教や内面に興味を持った日本人は多い。新たな読者を獲得できるのか、そして現代に活かされるのか期待されるところだ。


三浦綾子記念文学館  http://www.hyouten.com/

『三浦綾子 電子全集』特設サイト(「小学館 ebooks」内) http://ebook.shogakukan.co.jp/miura-ayako/

三浦綾子:小学館が電子版『全集』、来月から配信 「悩む人々の羅針盤」
2012年09月19日 毎日新聞 東京夕刊

 敬虔(けいけん)なクリスチャンとしても知られる作家の三浦綾子(1922~99)。数々の病と闘いながら発表した作品群が、東日本大震災後の日本で改めて注目を集めている。小学館は全書籍を電子化することを決め、このほど三浦綾子記念文学館(北海道旭川市)と共同で、発表会見を開いた。

 『三浦綾子 電子全集』は小学館の創業90年と、三浦の生誕90年を記念して企画。絵本、画文集を除く全80作品91点を、10月12日から配信する。デビュー作『氷点』と最後の小説『銃口』(ともに上下巻、各500円)を皮切りに月2回、2013年6月まで配信の予定。創作を支えた夫光世さん(88)が語るエピソードや、同記念文学館所有の秘蔵写真なども各巻に収録する。

 特に94年に刊行された『銃口』は、文芸の分野では後発だった同社にとって、記念碑的作品という。

 会見で白井勝也副社長は「小学館文庫は創刊15周年になるが、『銃口』をその創刊ラインアップに入れることができた。この作品を頂けたことは、どれだけ文庫創刊の力になったか」と振り返った。

 「祈り」「命」「愛」などをテーマとする三浦作品には3・11以降、新たな光が当たっている。同記念文学館によると、絶版状態だった『石ころのうた』(角川文庫)など7作が今年、復刊された。増刷総数も、昨年1年間は約6万3500冊だったが、今年は現時点で約22万1800冊に。うち『氷点』は11年が計約1万1000冊、12年計約4万冊という。『続・氷点』(同)は11年の計約6000冊に対し、12年は計約3万冊。同館の松本道男専務理事は「震災で多くの人が困難と向き合い、また年間自殺者が3万人を超すなど生きにくい社会の中で、悩む人たちが羅針盤を求めているのではないか」と分析する。


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