NHKスペシャル「最期の笑顔~納棺師が描いた東日本大震災~」

NHKスペシャル「最期の笑顔~納棺師が描いた東日本大震災~」
2012年8月17日 NHK

水彩画で描かれたやさしく、穏やかな笑顔・・・。一枚、一枚、水彩絵の具で丁寧に描かれた「目を閉じた“笑顔”」、横には手書きの言葉が添えられている・・・。
「おかあさんだ、おかあさーん! 復元後に対面してもらったとき、娘さんたちが大声で泣いた・・・お母さんもきっとね 娘さんたちのために大きな声で泣いてる・・・」

絵を描いているのは被災地の「おくりびと」笹原留似子さん(ささはら・るいこ)、40才。津波に流され損傷した遺体の傷をボランティアで修復、死化粧を施して家族に最後の対面をさせてきた納棺師だ。生後10日の赤ん坊から90才を超えるおばあちゃんまで、300人を超える遺体を手がけてきた。修復された遺体は皆、安らかな微笑みを浮かべた表情になり、家族と最後の対面を果たした。番組では、優しい“絵”、そして笹原さんによって最後の対面をした時の家族の“言葉”の中から、震災という悲劇の中に見いだされた家族の愛情の深さ、人間の優しさを見つめ直したい。

語り:原田美枝子
ディレクター:小池幸太郎



・49分構成

原田美枝子の語りが上手であった。残念ながら復元されたご遺体を撮影することはしないので、家族の反応から推測するしかないのがテレビ映像ドキュメントの限界だろう。これが記録映画であれば制限を設けて記録することもあり得るだろう。

NHKが放送する意図は、こうした技術ではなく、大震災後の人間の触れ合いがメインであるから勢い番組中ごろからは、笹岡さんよりも家族に焦点が移っていった。

この大震災で、いろいろな方々が持てる才能を活かしてボランティアに関わってきた。その中でも、人目を惹かないものもあるだろうし話題にならない活動もあったに違いない。

特に、亡くなった方々を発見し検死した上で、遺族探しや仮葬にいたるまで多くの方々が関係していると思われる。この番組は、それらの方々にも安心感を与えるものとなるだろう。

ご遺体が部分である場合もあり、こうして復元されることが可能である場合には遺族にとっては、きちんとしたお別れができる。無念さを感じつつ、それでも日常生活をしなけらばならないわけであり、家族も区切りをつける必要がある。それができる遺族は幸せともいえる。

番組でも語られたが、亡くなられた一人一人それぞれに人生があり記憶されるべきものを持っている。それを大切にしながら残された者たちが懸命に生きていくことしかできない。

笹岡さんの描かれた水彩の顔は、仏様のような穏やかな顔ばかりだ。それが救いだった。

なお素材が優れいるだけにかえって、どのように表現するのかが難しいところだ。涙を誘うような構成にすることもできるし、明日につなぐ意思を表すことも可能だ。

取材に応じた家族は真面目な方であったことは幸いした。この家族たちの10年後、20年後を記録していくことも新たな展開となるだろう。

なお、以下の情報は番組を見てから調べてみたもので、放送では触れられていない。

復元納棺師の活躍を描いたドキュメンタリーで番組では紹介されていなかったが、この素材となった絵の本と記録が、8/7に発売となっている。

納棺師は、映画「おくりびと」で有名となっているが、彼女の場合は遺体の復元・修復という技術 - エンバーミングという手技を行っている。


日本遺体衛生保全協会  http://www.embalming.jp/


笹原 留似子(ささはら・るいこ)
  1972年、北海道札幌市生まれ。岩手県北上市在住。復元納棺師として株式会社「桜」の代表を務める。東日本大震災では発生後まもなく沿岸地域に入り、津波や火災で大きな損傷を受けた遺体を生前の姿に戻す「復元ボランティア」に献身した。
  現在も納棺の仕事のかたわら、長期的視野に立った被災者支援の活動を続けている。2012年1月、社会に喜びや感動を与えた市民に贈られる「シチズン・オブ・ザ・イヤー」を受賞。

株式会社 桜 Webサイト http://www.sakura-noukan.com/main/


おもかげ復元師の震災絵日記
笹原留似子
単行本(ソフトカバー): 64ページ
出版社: ポプラ社 (2012/8/7)

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おもかげ復元師
笹原留似子
単行本(ソフトカバー): 256ページ
出版社: ポプラ社 (2012/8/7)

○もくじ

 はじめに ・・・・・・1

第一章 かけがえのない瞬間だからこそ
 高い、高~い ・・・・・・14
 作るのではなく、戻す ・・・・・・17
 してあげた、という想い出 ・・・・・・19
 いちばんの味方 ・・・・・・21
 掛け布団 ・・・・・・24
 あんたは本物の娘だよ ・・・・・・26

第二章 肉体が滅びるということ
 死後変化は、誰にでも起こる ・・・・・・32
 目が開いたり、出血したり ・・・・・・34
 硬直は、行き返るように解く ・・・・・・37
 水疱や死斑は、なぜできるのか ・・・・・・40
 故人と会話する ・・・・・・43
 なきがらがうなる ・・・・・・46
 特殊遺体とウジ ・・・・・・49
 溺死と自死 ・・・・・・51
 警察の方に感謝を ・・・・・・53
 ぬくもりは、家族のなかにある ・・・・・・56

第三章 見送りの現場で
 喪主さんの頑張り ・・・・・・60
 隠し銭 ・・・・・・62
 ビスコ ・・・・・・65
 生きざま ・・・・・・67
 あのね、実はね ・・・・・・69
 オレのせいだ ・・・・・・71
 花火とソフトクリーム ・・・・・・75
 触っても、いいのかい ・・・・・・79
 おまじない ・・・・・・81

第四章 天使たち
 おじいちゃんにキック ・・・・・・86
 三姉妹 ・・・・・・88
 あの世からのお友だち ・・・・・・91
 とっきゅうけん ・・・・・・94
 おしっこ、しーしー ・・・・・・97
 パグ ・・・・・・99
 狂犬注意 ・・・・・・102
 オラもそばにいたい ・・・・・・104

第五章 最後の言葉
 オレには最後の女ぁ ・・・・・・110
 ラブレター ・・・・・・113
 百点なんか ・・・・・・117
 大きくなったのに ・・・・・・120
 孤独死と介護 ・・・・・・123

第六章 あの日。3・11
 3・11 真っ暗闇の夜 ・・・・・・128
 3・12 凍りついた街 ・・・・・・135
 3・13 衝撃的な映像 ・・・・・・137
 3・16 沿岸エリアからの電話 ・・・・・・139
 3・19 現場へ ・・・・・・141
 3・20 安置所 ・・・・・・148
 3・21 五重の苦しみ ・・・・・・160
 3・22 つなげるつながる委員会 ・・・・・・164

第七章 復元ボランティア
 3・23 紀州造林 ・・・・・・172
 3・24 ご縁 ・・・・・・178
 3・26 架け橋 ・・・・・・181
 3・27 大好き ・・・・・・183
 3・28 癒し ・・・・・・188
 3・29 祈り ・・・・・・190
 3・30 男同士 ・・・・・・193
 3・31 やっと泣けた ・・・・・・195

第八章 支えられて
 4・10 新聞 ・・・・・・202
 4・20 一緒に ・・・・・・207
 4・25 口紅 ・・・・・・209
 5・1 勇気 ・・・・・・211
 5・2 唯一の映像 ・・・・・・215
 5・7 心の傷痕 ・・・・・・219
 5・15 自分の髪を ・・・・・・222
 生と死は背中合わせ ・・・・・・226
 つなげる ・・・・・・228
 おばあちゃんの魔法 ・・・・・・231

 おわりに ・・・・・・234


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