NHKスペシャル 東京大空襲 583枚の未公開写真

NHKスペシャル
東京大空襲 583枚の未公開写真
2012年3月18日

1944年11月から、終戦間際にかけて100回以上にわたって執拗に繰り返された「東京大空襲」。最大の被害をもたらした3月10日には、1日で10万人が命を奪われた。しかし、被害の全貌は知られていない。3月10日以外を記録した映像資料がほとんどなかったためだ。しかし今回、NHKは、44年秋から45年の終戦間際までの間に、陸軍参謀本部の指示で撮影された580枚余りの写真を入手した。写真、そして新たにアメリカ空軍基地で見つかった資料から、アメリカがいかに計画性をもって無差別爆撃を繰り返していたのか、明らかになりつつある。半年余り続いた東京大空襲で市民たちはどういう被害を受けていたのか、東京の街はどう焼け尽くされていったのか、未公開写真の関係者の証言を交えて描き出す。

ディレクター:片山厚志、野 剛

NHK特設ホームページ「東京大空襲」 特報首都圏



・番宣を見ていて期待していた。ただ内容はスクープ的なこともなく、過去の写真が見つかったということだ。戦時中に陸軍から写真撮影を許された国策会社「東方社」には多くのカメラマンが在籍し国威発揚たる写真を撮っていた。

ただ、勇ましい写真のみでなく今回のような空襲の被災写真も撮っていたということだ。それは宣伝用ではなく記録をしておくことが後に役立つという意図からだった。ところが敗戦を前にして責任追及を恐れるために記録類は焼却処分となった。むろん写真も同じ運命をたどった。

しかし、その中でも東京の空襲を記録したネガが民家から見つかった。その発掘経緯についても提供者に配慮してか分からないといった説明をしていた。本当は分かっているという感じである。関係するカメラマンが秘かに保管しておいたのだろう。

この番組の意図としては、残されたネガから場所の特定や、できればネガに映っている人物を特定してインタビューすることができればいいと取材を開始したものと思われる。

番組では、空襲の各種記録から投下地点を割り出して関係者を探し出して当時の様子などをインタビューするという方法となった。また番組後半には空襲で亡くなった人の簡素な弔いの様子を写した写真から、写っていた女性を特定した。

この女性は既に他界しており二人の娘が証言した。この経緯についても詳細は不明であり、この女性の素性についても報道しなかった。

番組中ごろでは、渡米してアメリカの作戦資料を探すとともに日本にも当時出撃した乗組員を探して無差別攻撃がなぜ行われたのかを探ろうとした。ここで明らかになったことは、米軍は事前に調査研究をしっかりと行い、東京の爆撃区域の設定を計画し、焼夷弾の効果的な使い方を軍事施設で実験して日本家屋に適したものに改善していった。

こうした米軍の戦闘能力は、別のNHKスペシャルでも明らかなように組織的な実験と言ってよく、原爆に代表されるように緻密に計算されたものであった。そのことを想起させられた。だから兵器の威力を調べるために従前の調査をしっかりとしておく。その結果を新たな兵器開発に利用するドライな国がアメリカといえる。

なぜ絨毯爆撃(じゅうたんばくげき、Carpet bombing)が行われたかについては、当初は軍事施設を狙っていたというが、明らかに市民を巻き込むことを見越した戦術に切り替えたということだろう。それは一乗組員の意図とは関係ないことだ。出撃した爆撃機は積んである爆弾や焼夷弾を持ち帰ることはあり得ないことだ。

ということで、3月10日の東京大空襲として知られているもの以外にも、その前後に多くの空襲を体験していたことを写真も交えて伝えたい意図は分かった。

見終わっての感想であるが、写真を追求するのか東京大空襲を追求するのか、または米軍の戦術を追求するのかが曖昧であった。番組中にCGを使って写真から破壊された町の一部を再現していたのだろうが、必要性が感じられなかった。その写真が物語るものを素直に見せることが大事だろう。

上記でも記したが、今回の取材の経緯が不明な点が多く(明らかにしたくないという意向を受けたものだろう)、個人が鮮明に出てこない分だけ印象が不足した。また米国取材も充実させれば一本の番組になるだけに中途半端な取扱いだった。

ここ数年NHKは戦争を伝えることに重点を置いてプロジェクトを進行してきたのだが、昨年の東日本大震災を受けて重点がそちらに移動してしまったようだ。戦争関係者が90歳を超える高齢になり記録の限界点にある。震災報道は民放でも盛んに行っており、NHKは軸足をどこに据えるかをもう一度考えてほしいものである。

追記
特設ページから、番組では紹介されなかった経緯の一部が記されていた。

「しかし今回、NHKは、陸軍参謀本部の指示で撮影された2万枚のネガを入手。
その中に東京大空襲を鮮明に記録した写真が580枚余り発見されたのだ。」


・放送を終えて ディレクター:片山厚志

空襲の時代を生きた人々を記録した583枚の写真に、徹底的に向き合った半年間。
その作業を終えたいま、痛感しているのは、何よりも、「記録を残すこと」の大切さです。

私たちの祖父や祖母、親の世代が直接に体験したもっとも“ポピュラー”な戦争被害、空襲。B29や焼い弾といった言葉やイメージは、日本人としての記憶にすり込まれているとさえ感じます。それにも関わらず、実際の所は、空襲に直面した私たちの祖父や祖母は、その時どんな表情をしていたのか、どんな風に悲惨だったのか、多くがあやふやなイメージで占められていました。たった67年前の出来事なのに、それを確かめるすべがほとんど無かったからです。

今回の写真は、そうした空白を埋める本当に貴重な資料でした。空からの無差別攻撃にさらされた人々が驚き悲しむ表情からは、空襲という攻撃、市民を巻き込む戦争に対して強い憤りを感じました。焼け野原でたくましく笑顔も見せながら復興に立ち上がる人々の表情からは、震災後の時代を生きる私たちを励ます先人たちのエールを感じる事が出来ました。記録は、同じ過ちを繰り返さないための、そして、前に進むための大切なきっかけになり得るのだと、改めて強く実感したのです。

翻って、現在の自分自身。日々、各地を取材撮影をして番組を制作している私たちは、ある意味「記録すること」をなりわいとしています。世の中の動きをキャッチしようともがいて、振り切られないようにしがみつく日々を過ごしてはいます。しかし、この仕事を、未来の人々にとって前に進むきっかけとするのだという決意と覚悟は、果たして自分にはあるのだろうか…。
先人たちが残した583枚の写真から聞こえる、「しっかりやれよ」の声に応えるべく、また新たな取材の日々がはじまります。

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