全日本仏教会 異例の「脱原発」宣言

全日本仏教会 異例の「脱原発」宣言
2011.12.11 東京新聞「こちら特報部」

 全国の伝統仏教教団でつくる全日本仏教会(全日仏)が「脱原発依存」を宣言した。保守的といわれる仏教界が、国論を二分するような問題で一定の方向性を打ち出すのは異例だ。福島原発周辺の寺が避難生活を強いられる中、仏教界にとっても原発問題は切実なテーマになっている。(佐藤圭)

 ▼ 誰かの犠牲もういらぬ

 全日仏は今月一日、都内で理事会を開き、「原発によらない生き方を求めて」と題する宣言文を、採択した。八月二十五日、河野太通会長名で「二度とこのような事故を繰り返さない」との談話を発表していたが、宣言文では「原発への依存を減らし、原発によらない社会の実現を目指す」と踏み込んだ。
 戸松義晴事務総長は「即時撤廃ではないのかという批判があるかもしれないが、最終的にはすべての原発をなくしていきたい。仏教界の総意として最大限のものを出した」と説明する。

 原発事故前は、反原発運動の全国組織「原子力行政を問い直す宗教者の会」など一部を除き、仏教界が正面から原発と向き合う機会は少なかった。「時局の問題で反対、賛成どちらかに偏ったメッセージを出すのは、政教分離、政治的中立性の観点から難しい。原発についても福島事故前は、宣言や声明を出したことはない。宗教者の会などの動きが仏教界全体として共有できなかった」(戸松氏)

 ▼ 64の寺避難続く 宗派超え支援へ

 だが、原発の安全神話が崩壊した3・11以降、加盟団体では、原発を問い直す宣言や催しが相次いだ。
 「原発に依存しない社会の実現」をうたった宣言を九月に採択した臨済宗妙心寺派、原発への依存を考えるシンポジウムを十一月に開いた曹洞宗大本山永平寺(福井県永平寺町)が代表的だ。全日仏の宣言文も、これらの延長線上にある。
 全日仏では今後、衆参両院議員二百三十人が参加する「仏教懇話会」などを通じて宣言文を広めていく方針だ。
 戸松氏は「加盟団体かち要望があれば》委員会を設けるなどして具体策を検討するが、それぞれが自発的に取り組むことが基本だ」と強調する。
 仏教界としては、原発事故で故郷を追われた住職や檀信徒への支援が喫緊の課題だ。現在、警戒区域や計画的避難区域に位置する*六十四の寺が避難生活を続けている。



・この宣言の内容は、取り立てて目新しいことではない。

脱原発ということで、反原発でもなくオーソドックスな歩調である。現在日本で、原発を推進しようなどということをいう人は誰もいないだろう。

仏教は、政治的中立性など考える必要も実はない。仏教とは、どんな政治体制であっても人間の生きる道を説くのが本来性であるからだ。

宗教者が社会的な発言をし、宗教の基本に立ち人間中心の生き方からの脱却を説くことは間違いではないだろう。その言動が一致していれば多くの人たちに影響を与えることになる。


財団法人 全日本仏教会 宣言文

 ◎ 原子力発電によらない生き方を求めて

 東京電力福島第一原子力発電所事故による放射性物質の拡散により、多くの人々が住み慣れた故郷を追われ、避難生活を強いられています。避難されている人々はやり場のない怒りと見通しのつかない不安の中、苦悩の日々を過ごされています。また、乳幼児や児童をもつ多くのご家族が子どもたちへの放射線による健康被害を心配し、「いのち」に対する大きな不安の中、生活を送っています。

 広範囲に拡散した放射性物質が、日本だけでなく地球規模で自然環境、生態系に影響を与え、人間だけでなく様々な「いのち」を脅かす可能性は否めません。

 日本は原子爆弾による世界で唯一の被爆国であります。多くの人々の「いのち」が奪われ、また、一命をとりとめられた人々は現在もなお放射線による被曝で苦しんでいます。同じ過ちを人類が再び繰り返さないために、私たち日本人はその悲惨さ、苦しみをとおして「いのち」の尊さを世界の人々に伝え続けています。

 全日本仏教会は仏教精神にもとづき、一人ひとりの「いのち」が尊重される社会を築くため、世界平和の実現に取り組んでまいりました。その一方で私たちはもっと快適に、もっと便利にと欲望を拡大してきました。その利便性の追求の陰には、原子力発電所立地の人々が事故による「いのち」の不安に脅かされながら日々生活を送り、さらには負の遺産となる処理不可能な放射性廃棄物を生み出し、未来に問題を残しているという現実があります。だからこそ、私たちはこのような原発事故による「いのち」と平和な生活が脅かされるような事態をまねいたことを深く反省しなければなりません。

 私たち全日本仏教会は「いのち」を脅かす原子力発電への依存を減らし、原子力発電に依らない持続可能なエネルギーによる社会の実現を目指します。誰かの犠牲の上に成り立つ豊かさを願うのではなく、個人の幸福が人類の福祉と調和する道を選ばなければなりません。

 そして、私たちはこの問題に一人ひとりが自分の問題として向き合い、自身の生活のあり方を見直す中で、過剰な物質的欲望から脱し、足ることを知り、自然の前で謙虚である生活の実現にむけて最善を尽くし、一人ひとりの「いのち」が守られる社会を築くことを宣言いたします。

2011(平成23)年12月1日 財団法人 全日本仏教会




全日本仏教会 河野大通会長 2012.2.20
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