NHKスペシャル ここまで来た!うつ病治療

NHKスペシャル
ここまで来た!うつ病治療
2012年2月12日 NHK総合テレビ

この10年間で倍増し、患者が増加し続ける「うつ病」。働き盛りの世代が多く、治療も長期化しやすいため、社会的損失はあらゆる病気の中で最大だと言われている。脳科学研究によって、この病の診断や治療のあり方に、今大きな変化が起き始めている。

これまで気分の落ち込みや無気力といった症状から、ひとくくりに「うつ病」と診断されてきた患者の中に、実はさまざまなタイプの精神疾患が含まれていることが分かってきた。誤診を防ぎ適切な治療につなげられると注目されているのは、脳血流の画像診断装置・光トポグラフィー(NIRS)による診断だ。前頭葉の血流量の変化を測定することにより、「うつ病」と症状が似ている「双極性障害」や「統合失調症」とを客観的に見分けられるようになってきた。

また薬による治療で改善が見られない患者への新たな治療法として注目を集めているのが、脳に直接、磁気刺激を与える方法だ。機能が低下している脳の部位を磁気で刺激し症状を改善しようというもので、アメリカでは長年苦しんできたうつ病の症状が劇的に良くなるなど、確かな効果が報告されている。番組では日本やアメリカを中心に進み始めた診断と治療の最前線を取材。苦しんでいた患者たちが改善していく過程を見つめていく。

スタジオパート出演:筧利夫、南沢奈央



【キイワード】
①「TMS」(経頭蓋磁気刺激)…DLPFCに磁気刺激を与える
  「DLPFC」(背外側前頭前野)…判断・意欲をつかさどる箇所
  「へんとう体」…不安や悲しみなどネガティブな感情をつかさどる箇所

②「DBS」(脳深部刺激)…脳内に電極を埋め込み電気刺激を25野に与え続ける
  「25野」…DLPFCと、へんとう体の双方に刺激をあたえる箇所

③「NIRS」(光トポグラフィー検査)…脳の血流量から精神疾患の鑑別に利用される

④認知行動療法(心理カウンセリング技法の一種)…ことばの歪みを修正することで否定的思考を改善する

・NHKスペシャルのうつ病シリーズの最新作。

上記の専門用語を使うも、俳優をナビゲーターとしてグラフィックを多用することや、画面でのまとめや注意書きを入れるなど、かなり凝った作りの構成となっている。だから、反対に言えることは分かりにくいということにもなる。

NHKホームページでは、日本の診断技術として光トポグラフィー検査と認知行動療法を紹介していたが、後者はNHKが随分と報道している。

番組構成は、米国での治療法紹介を前半に持ってきて、日本のことは後半に持ってきた。それは、米国での磁気刺激を使った治療法が効果があると報道している。特に、劇的な回復という紹介の通りに、磁気刺激を受けた重度のうつ病患者が数日から数週間で激変している様子を捉えていて説得力がある。

なお、米国での治療法は日本では認可されておらずに、まだ数年かかると紹介されていた。

日本の話では躁うつ病」を「うつ病」と誤診するケースが、4割くらいはあるのではないかと海外の研究から示し、治療薬が違うので衝動性が増して事故が起きる危険性があるとしていた。

以上が、概略である。

さて、NHKスペシャルで過去の放送されたプロザックを万能薬と報道するなど、明らかにおかしい報道がされてきたが、今回の磁気刺激療法はいかがなものなのだろうか。プロザックの特集をした時も、劇的な改善をしたと称する人たちを多数登場させていたことを思い出す。

米国は、日本以上にドラッグを多用する人たちであり、薬が万能であるという意識が強い。そのために多くの薬を服用し、副作用も強いものと思われる。また、革新的な実験も多く行われており本当に効果があるのかは分かりにくい。

この番組を見ている人たちには当然に長年病気で苦しんでいる方や家族が見ている。そして、この治療法をすれば治るという印象を持ってしまっている。米国の治療法は7割程度が、症状が改善するとしていたが、その数字がどの程度のものなのかの真偽は難しい点だ。

劇的に回復したと番組に登場した人たちは、確かに違ってきたと感じるように思うのだが、この効果が持続できるのかや副作用や障害が起きることはないのだろうかとも思うし、何よりも依然として改善しない人たちがいるという事実も忘れてはならない。

病気は根治するものという信仰に近いものを感じてしまう。病気と一緒に生きることや、ライフスタイルを変えることも大切であり、脳に過大な負担を強いる生活こそが元凶に思えるのだが。

NHKの報道を見ると、それほど効果があるのかというのが正直な感想である。


〈取材協力〉山脇成人(広島大学精神科)
      中村元昭(神奈川県精神医療センター芹香病院)

ディレクター:真野修一 酒井邦博


神奈川県立精神医療センター芹香病院
http://kanagawa-pho.jp/osirase/byouin/seisin/index.html

所在地
〒233-0006
神奈川県横浜市港南区芹が谷2-5-1
電話.045-822-0241
ファックス.045-825-3852
※番号の掛け間違いが大変多くなっております。よくお確かめの上、おかけ下さい。
診療受付時間
初診.
火曜日~金曜日
午前8時30分~11時00分(時間予約制)
再診.
月曜日~金曜日
時間予約制
休診日
土曜日、日曜日、祝日、
年末年始(12月29日~1月3日)

●磁気刺激治療(rTMS)専用ダイアル終了について 20120215

 芹香病院が臨床研究で行っている磁気刺激治療(rTMS)に関する取組みが「NHKスペシャル」で取り上げられ、多数の視聴者からお問い合わせをいただきました。

 誠にありがとうございます。また、問い合わせ専用ダイアルについては、繋がりにくい状況となり、大変ご迷惑をおかけいたしました。

 磁気刺激治療(rTMS)は、治療として行っているものではなく、臨床研究を目的としているものです。臨床研究についても、ご協力いただいける方には限りがございまして、現時点で予約が一杯となっており、新たな申し出についてはお断りをしています。

 放映後設けた問い合わせ専用ダイアルも平成24年2月15日(水)15時をもって終了させていただきます。

 ご関心を持っていただいたところ、誠に恐縮でございますが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。



NHKスペシャル2月12日放送【うつ病は治せる病気か▽患者100万人時代到来
▽薬に頼らない最新治療1カ月でまるで別人に】の詳細情報です。
◎出演:筧利夫、南沢奈央◎語り:高橋美鈴

詳細情報  http://topicsnow.blog72.fc2.com/

●1時限目:アメリカで始まった画期的な治療…TMS(経頭蓋磁気刺激)
※症状が重い場合、なかなか治らない場合、アルバロ・パスカルレオーネ教授(ハーバード大学)

・抗うつ薬は3人に1人は効かない(アメリカの研究による)
・TMSは間隔を空けながら約40分間、症状が治まるまで毎日脳に磁気刺激を与え続ける治療法で全米400か所に導入されている
・うつ病患者は前頭葉の血流量が少ないため、前頭葉の左側にあるDLPFCを磁気刺激して血流量を増やせば症状が改善する
・抗うつ薬を飲んでいたものの効かなかった74歳の男性は2回の治療で長年食べていなかった朝食を食べられるようになった

◎DLPFC(背外側前頭前野)の機能
 (1)判断や意欲をつかさどる
 (2)へんとう体(不安・恐怖・悲しみなどの感情が生まれる場所)の暴走を抑える

◎うつ病患者の脳
 (1)DLPFCの活動が弱り判断力や意欲が低下
 (2)へんとう体が過剰に活動、不安・恐怖・悲しみが止まらない

●2時限目:磁気刺激 劇的な回復の記録

・10年以上、10種類以上の抗うつ薬が効かなかった59歳の男性は1週間後生活に意欲、2週間後に体のだるさが消え、1か月後笑顔が出た
 この男性が治療を受けたクリニックでは磁気刺激で約7割が回復
・患者は少しずつ症状が改善するたびに回復を実感できるので、運動や規則正しい食生活に取り組む意欲が高まる→回復に向けた良い循環
・日本独自に安全性と有効性を確認し承認されなければ治療に使えない

●3時限目:脳科学が挑む最先端治療…脳深部刺激(DBS)
※症状が重い場合、なかなか治らない場合、ヘレン・メイバーグ教授(メモリー大学)

・先端に電極のついた細い電線を脳から胸にかけて埋め込み、電気の刺激で脳の働きを改善する治療法、うつ病患者約40人中75%の症状が改善した
・電気刺激する25野はへんとう体とDLPFCの両方に作用、不安・恐怖・意欲低下を改善する

●4時限目:日本で始まった新たな“診断”…光トポグラフィー検査

・医師の経験で異なる問診から、科学的データが得られる光トポグラフィー検査へ
・光トポグラフィー検査は、検査用の帽子をかぶって、頭に近赤外腺を当て、言葉を考える課題を行っているときの脳の血液量の変化を測定する
・国の先進医療として山口大学医学部附属病院など全国13か所で実施
・双極性障害をうつ病と誤診するケースが多い(最新の研究結果で41.4%)
 理由はそう状態の期間より、うつ状態の期間が長く続く患者が多く、患者はうつ状態の時に受診するため、うつ病と誤診されてしまう
・双極性障害の患者が抗うつ薬を飲むと気分の波が押し上げられ、うつ状態からそう状態に極端に気分が高揚し、危険な衝動にかられることも

【症状別血液量の変化】
・健康な人の場合、言葉を考えると脳がすぐに活発になり血液量は増える
・うつ病患者の場合、DLPFCの働きが悪いため血液量はほとんど増えない
・統合失調症患者の場合、血液量は不規則に上下する
・双極性障害(そううつ病)患者の場合、血液量はゆっくり上昇する

●5時限目:“ことばの力”で治す…カウンセリング(認知行動療法)
※比較的症状が軽い、発症して間もない場合

・認知行動療法とは、うつ病などの心の病気をもった人が、いろいろな出来事に出会ったときの「行動」や「考え方(認知)」に注目し、それらを良い方向にコントロールする治療法
・「行動」や「考え方」それぞれに応じた治療法があり、「行動」については生活の中で気持ちが晴れるような行動を少しでも増やしていく、「考え方」については気持ちが動揺したときに 浮かんでくる考え方をバランスのよいものに変えていく
・うつ病の人はへんとう体が暴走し、すぐに不安や悲しみの感情がわきあがってくるが、認知行動療法で訓練を重ねると悲しい気持ちになっても前向きに考えられるようになり、DLPFCが活性化する結果、DLPFCがへんとう体にブレーキをかけ、うつ病の症状を抑えこむことができる(ピッツバーグ大学 グレッグ・シーグル准教授)

●補講:“うつ病は予防できる”未来への研究
※ローリエット脳研究所(アメリカ オクラホマ州)ウェイン・ドレベッツ教授

 脳の活動をリアルタイムで観察できる装置を使い、へんとう体を自分自身でコントロールする方法の研究、被験者は自分のへんとう体を観察しながら、良い状態にしていく訓練を行う
→習得できれば不安や悲しみを感じた時でもDLPFCを活性化し、へんとう体の暴走を抑えられ、その結果、うつ病を治療だけでなく予防することが可能になる

◎日本で行われている磁気刺激治療
・神奈川県立精神医療センター芹香病院
※薬で1年以上改善しない患者の中からさらに条件を絞って磁気刺激を行っている
 住所:神奈川県横浜市港南区芹が谷2-5-1 TEL:045-822-0241



「ここまで来た!うつ病治療」……2月12日のNHKスペシャルから
2012年2月13日 猫の欠伸研究室 Research Labo of Cat's Yawning

 昨日、2月12日(日)のNHKスペシャルは、「ここまで来た!うつ病治療」という内容でした。うつ病の当事者の皆さんや、ご家族の方には、大きな期待をいただきながらご覧になった方も多いかと思います。小生も多分に漏れず、パソコンでビデオを撮りながら見ておりました。

 以下、今日になってビデオを見ながら、内容を確認しましたので、そのポイントを復習を兼ねてまとめてみました。必要な箇所ではビデオを止めたり、見直したりしながら記録しましたので、大きな間違いはないかと思いますが,あくまでも小生の理解に基づくものですので、その点はご了解ください。

 わが国のうつ病患者は100万人を超え、国民病ともいえる状況を呈しているものの、薬を飲んでも治らない、元のようには働けないということも多かった。しかし、最近の脳科学の進歩によって、この常識も変わりつつあり、うつ病が解き明かされ、新たな治療が登場してきている。その背景には、アメリカのSTAR*D研究の結果、抗うつ薬は、3人に1人は聞かないことが明らかにされ、また、うつ病は心の病気ではなく脳の病気であるという認識が広がってきたことにある。

1.アメリカで始まった画期的な治療法……経頭蓋磁気刺激(TMS)
 ハーバード大学のアルパロ・パスカルレオーネ教授が開発した治療法で、磁気刺激で前頭葉を活性化させ、血流量を増加させることでうつ病の治療が可能と考えたものです。

 パスカルレオーネ教授は、うつ症状の改善度と、DLPFC(背外側前頭前野)の活性化との間に関連性があることを見いだしました。DLPFCは、判断や意欲に関わる部位です。ただし、このうつ病に直接関連しているのは、DLPFCではなく、扁桃体と呼ばれる部位です。扁桃体は、不安・恐怖・悲しみなどの、ネガティブな感情が生まれる場所です。うつ病患者の脳では、扁桃体が過剰に活動し、不安・恐怖・悲しみなどが止まらないと考えられています。DLPFCは、この扁桃体の活動抑制する働きがあると考えられています。つまり、健常者では、DLPFCと扁桃体とがバランスよく活動しているのに対して、うつ病患者ではバランスが崩れ、DLPFCの活動が低下し、扁桃体が過活動するために、うつ症状が起きていると考えられるのです。

 したがって、このDLPFCに磁気刺激を与え、その状態を改善してやれば、判断・意欲が改善されるとともに、扁桃体の活動が沈静化され、その結果、不安・悲しみも収まるという仮説を、パスカルレオーネ教授は立てたのです。このTMSは、現在、全米400カ所のクリニックで実施されています。DLPFCにきちんと磁気があたることを確認した上で、患者の反応を見てその強さを調節し、1日40分を毎日継続します。どのくらいの期間で効果が出るかについては、個人差があるようでした。

 紹介されていた74歳の男性の事例では、2日後には、朝きちんと起きられるようになり、また、朝食もとれるようになっていました。涙もろさも収まり始めていました。この男性は、番組の最後にももう一度登場し、1ヶ月ですっかり元気になり、市場での買い物を楽しんだり、海外旅行を計画しているということでした。

2.磁気刺激 劇的回復の記録
 59歳男性。抗うつ剤を10種類以上試したものの、改善しませんでした。TMSを受けて2日後には、無精髭を剃り、シャワーを浴びて治療に現れました。1週間で、意欲が出て来て、雨にも関わらず、新しく開店したハンバーガー屋を探しに行ったと述べています。2週間経って、だるさが低下し、夜も熟睡できるようになり、その結果朝も調子よく目覚めています。

 主治医は、「効果を実感しやすいので、患者も治療に前向きになれる。また、「治療に限らず、運動や規則正しい食生活に取り組む意欲が堪り、回復に向けたよい循環が生まれる」とコメントしています。

 この男性は、1ヶ月後には、「だいぶ良い」と述べ、髪型も整え、良い笑顔が見られており、まるで別人の風貌を呈していました。「以前は、真っ暗な穴に落ちたようで、どうしたら抜け出せるのかまったく分からなかった。人生を絶望の中で生きていくしかないと諦めていた。しかし、その横今日から抜け出すことができて、まさに奇跡」と言っています。

 このクリニックでの治癒率は、約70%だといいます。完治するかどうかは、まだ研究中で、効果のないケースもあり、また、回復後も効果を保つのに月1回継続するひともいるということですので。

3.脳科学が挑む最先端治療……脳深部刺激(DBS)
 エモリー大学のヘレン・メイバーグ教授は、脳深部刺激(DBS)という、脳の深部に電気信号を送り、不安・悲しみの気持ちを抑え込む方法を開発しました。脳の25野という部位に、電極を差し込み、胸元に埋め込んだバッテリから持続的に電気信号を送る方法です。この25野は、上記のDLPFCと、扁桃体の双方に連絡があり、25野を刺激することによって、両方の機能を調整できると考えられるのです。つまり、25野は、パソコン・ネットワークでいえば、「ハブ(Hub)」の役割を果たしており、①扁桃体とDLPFCの双方に作用する、②不安・恐怖と、意欲低下の両者を改善するのです。

 20年間、うつで苦しんでいて、4年前にDBSを装着したのですが、「脳に電極があるのは不思議な感じだが、気にはならない。変化は劇的で、人生を返してもらった気がする」と述べています。これまでに40名がこの治療を受け、そのうち、症状が改善したのは75%といいます。

4.日本で始まった新たな“診断”……光トポグラフィ検査
 うつ病をはじめ、精神疾患では、通常、問診で診断が行われます。そのため、診断には経験が必要とされますが、一方では、師団のバラツキや誤診も起こりえます。

 紹介された女性の事例では、2年前から気分が酷く落ち込み、終日起きられず、子どもの相手もできず、家事は夫が担当していました。当初は、うつ病の診断を受けたのですが、別の医療機関では、「軽い認知症の疑い。治療はない」と言われ、絶望し、訳が分からなくなっていました。その後あるきっかけで、山口大学医学部付属病院を受診し、「光トポグラフィ検査」によって、うつ病と改めて診断され、やっと「病気に向き合う気持ちが出て来た」と述べています。

 この光トポグラフィ検査は、頭に近赤外線を照射し、DLPFC及びその周辺の脳の働きを血流量の変化から調べる検査法です。例えば、「『と』で始まることばを言う」といった、ことばを考える検査を実施しながら、脳の血流量の変化を測定します。番組では、刺激後を与えてから60秒間の血流量の変化のパタンが示されていました(次を参照)。

  健常者……刺激後すぐに血流量が増加する
  うつ病患者……考えている間も血流量は増えない
  統合失調症患者……血流量は、不規則に上下変動する
  双極性障害患者……血流量は、ゆっくり上昇する傾向にある

 精神疾患の正確な診断につながることが期待される診断法です。群馬大の福田正人准教授は、「何の検査もないということで、医療者も不確実性を持ったり、場合によっては見逃したり、誤診することもある。それらに気づくのには、非常に役に立つ検査」と述べていました。

 この光トポグラフィ検査は、今のところ、国の先進医療として、全国13カ所の病院で実施されています。その1つ、日本医科大学千葉北総病院で、従来はうつ病とされていた男性が、実は双極性障害であったと判明した事例が紹介されていました。うつ病医療の大きな問題点の1つに、このように、実際は双極性障害(従来、躁うつ病と言われた疾患)であるのに、うつ病と誤診されることがあります。

 紹介されていた男性は、10年以上改善されないため、診断が間違っているのではないかと疑っていたといいます。光トポグラフィ検査の結果から、双極性障害の可能性が考えられ、再度、詳しく問診した結果、「今にして思うと、すごくテンションが高くなったっていうか、あれもやらなきゃ、これもやらなきゃと頭も非常に良く回転するような感じっていうのがよくあった」と述べ、双極性障害と診断が確定しました。

 実際、双極性障害と、うつ病との見極めは難しく、最近の報告(Zimmerman, P. et al., 2009, Arch. Gen. Psychiatry)によれば、うつ病の診断を受けた人のうち、実に41.4%が双極性障害の誤診であったといいます。双極性障害では、うつの病相と、そうの病相とが交互にみられる訳ですが、中でも、そうの病相が短く、うつの期間が長いタイプは、うつ状態で受診することが多いため、うつと誤診されがちです。

 誤診そのものはもちろんよくありませんが、双極性障害をうつと誤診した場合、患者さんの命に関わる事態を引き起こす危険性があります。10年間抗うつ剤を服用していた女性が事例として紹介されていましたが、横断歩道橋から飛び降りたいという自殺衝動を感じたことがあったそうです。抗うつ薬は、落ち込んだ気分を高める作用がありますが、双極性障害の患者が服用すると、気分の波が全般的に押し上げられます。また、ときには、うつからそうへと、気分が極端に高揚してしまうことがあり、それが自殺衝動につながっていまうことがあるのです。

 この女性の場合、幸い、自殺に至ることはなく、薬を切り替えて1ヶ月後には、症状は劇的に改善し、「この仕事が終わったら何をしたいとか、誰々とご飯を食べに行きたいとか、手帳を買って、先のことを考えたり出来るようになったので嬉しい」と述べていました。

 精神疾患の診断技術は進歩してこなかったのかという疑問が湧きます。とくに、うつ病は、古代ギリシャ時代から存在したと考えられています。たとえば、医聖・ヒポクラテスは、うつを「メランコリア」と呼びましたが、それが、「憂うつ」を現す、「メランコリー」の語源になっています。

 うつ病をはじめ、精神疾患の診断への科学的手法の導入は、アメリカで約30年前に始まりました。当時、ベトナム戦争の影響や、不況から、うつが増大していた頃です。診断のバラツキを防ぐために、DSM(アメリカ精神医学会が作成した、精神疾患診断マニュアル)が導入されたのです。DSMによれば、次の症状を含む9つの症状のうち、5つ以上が2週間以上続くときに、うつと診断されます。

  気分が落ち込む
  眠れない
  疲労感
  意欲・興味がなくなる
  判断力や集中力がなくなる
  自殺を考える など

 このDSMは、容易に、また、スピーディーに診断が可能であったため、たちまち世界中に広まりました。その結果、患者の状況を詳しく把握しないで、症状のみをマニュアル的にチェックするという、安易な問診が増加してしまったのです。これに対しては、反省する動きも出て来ています。

5.“ことばの力”で治す……認知行動療法
 認知行動療法が、症状の軽いうつ病患者の脳を変える、ということをピッツバーグ大学のグレッグ・シーグル准教授は、研究しています。

 3ヶ月間、認知行動療法を受けた結果、扁桃体の活動が治療によって低下された女性のケースが紹介されていました。このケースでは、実際に、脳画像上でも、扁桃体の活動が低下したことが示されていました。女性は、「夫に注意される度に自分を激しく責めていた。いつも自分なんかいなくてもいいと、悪い方に考えていた。でも、今では何でも前向きに考えられる。認知行動療法を受けて、本当によかった」と述べていました。

 認知行動療法は、カウンセリング(と番組では述べていましたが、心理療法とした方がよいかも知れません)の一種ですが、カウンセラーが積極的に働きかける方法です。仕事が完全にはできなかったという面接場面で、臨床心理士が、「できなかったのは1%で、残りの99%はきちんとできている。あなたは、こういう部下がいたら、責めるでしょうか?」と介入していました。

 ことばがどのように脳を変えるのかというメカニズムは、次のように説明されていました。「扁桃体の暴走によって、不安・悲しみが増える」のに対して、認知行動療法によって、DLPFCを活性化させることによって、前向きに考えられるようになるとともに、扁桃体の暴走が抑えられ、その結果、不安・悲しみも抑制されると考えられるのです。

6.<補講>“うつ病は予防できる” 未来への研究
 ローリエット脳研究所のウェイン・ドレベッツ教授は、脳活動をリアルタイムで確認することによって、扁桃体の活動を対象者にフィードバックし、それを自己コントロールする方法を研究しています。

 脳の活動をリアルタイムでモニターし、画面上に扁桃体の活動の変化を視覚化して呈示します。被験者に「できるだけ幸せな出来事を思い出す」ようにしてもらうことで、次第に扁桃体の活動をコントロールできるようになります。

 この方法を習得することによって、不安・悲しみが生じてきたときに、幸せな出来事を思い出すことでDLPFCを活性化し、それが扁桃体の活動を抑制し、ひいてはうつ病を予防できると考えられるのです。

7.番組ナビゲーターの一人、南沢奈央さんによるレポート
 まずは、TMSのところで紹介されていた74歳の男性の1ヶ月後の様子が報告されていました。重複しますが、1ヶ月後にはすっかり元気を取り戻し、奥さんと市場へ出かけて買い物を楽しんでいました。また、久しぶりの海外旅行を考えていることが紹介されています。「素晴らしい気分で、生きているという実感がある」と述べています。

 日本でもTMSが始まりつつあることも取り上げられていました。その1つ、神奈川県立精神医療センター芹香<きんこう>病院では、「薬で1年以上改善しない患者の中から、さらに条件を絞って磁気刺激を行っている」ということです。

 5年以上、うつの治療を継続している男性が、TMSによる治療を受けています。治療は、「キツツキに叩かれているような感じ」だそうです。1週間後、「とてもスッキリした感じで、雲が晴れたような感じがする。5年間常に頭の中にもやがかかっていたような状態だったが、一切なくなって、うつになる前の自分に近い感じに戻った。足取りが軽くなったというか、気持ちいい。日の光をいっぱい浴びながら」とコメントしていました。

 以上、長くなりましたが、昨日、2月12日(日)のNHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」の内容です。

 後ほど、専門用語や、脳の機能、部位、認知行動療法などについて、別のエントリで補足を認めようと思っています。

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