FNSドキュメンタリー大賞 ぼけやへん~素人ちんどん 人生のキセキ~

FNSドキュメンタリー大賞
『ぼけやへん~素人ちんどん 人生のキセキ~』
2011年6月28日 25時50分~26時45分
制作:テレビ愛媛

愛媛県北宇和郡鬼北町。ここで活動している四国唯一の素人ちんどん「愛治ちんどんクラブ」は平均年齢は約70歳。「ぼけ防止」にと趣味で始めた素人ちんどんは結成から15年たって、はだかる「老い」に悩んでいた。気力も体力も昔のようにはいかない中、「まだやりたい」思いを察した若手メンバーが8年ぶりに新曲を提案。老人たちに気力が戻ってくるも、そんな最中に未曾有の大震災が日本を襲います。そこで老人たちは自らチャリティーコンサートを主催。これまでの自分たちでは思ってもみなかった行動に戸惑いながらも体当たりでぶつかってゆきます。



・昨年は、大震災に関連したドキュメンタリーがさまざま作られている。時代を記録する使命のあるドキュメンタリーとしては当然にしても、それだけではメゲテしまう。

FNN系列局の中で優れた番組を選ぶ大賞に選ばれたのは、素人ちんどんクラブの活動を記録したもの。その素材が明るいものであるので、まず目立つことが大きいインパクトなった。

彼らの15年目の活動を追うことで、高齢化に悩む地方都市の姿を伝える。

まず、驚くことは特に音楽の素養もない人たちが一から始めた活動であること。そして、それが続いていることだろう。むろん平均年齢の上昇で活動休止ということも視野に入ってくる時期になっている。マンネリ化した活動にも問題があるだろう。

そんな彼らが久しぶりの新曲に臨む姿を通して、人間同士の一体感を感じることができる。

映像には、ドキュメンタリー用と思われるサービスカットもあり、むろん意識的に作り上げてあることは明白である。高齢化の進む地方都市のなかで華やかな存在なのだが、合わせて挿入されたクラブ団員の日常はまったく普通である。

リア充という言葉が流行っているが、彼らもそうなのだろう。実際に人前で演奏することは、緊張するにしても充実感を伴うものだ。演奏とはそういうもの。できるならば、さらに密着して取材してほしい。


 愛媛県の南西部に位置する高知県との県境の町、北宇和郡鬼北町。ここで活動しているのが四国唯一の素人ちんどん「愛治ちんどんクラブ」だ。メンバーの平均年齢は約70歳。「ぼけ防止」にと近所のお年寄りが集まり、15年前に趣味で始めた素人ちんどん。楽器はおろか音符さえも読めなかったメンバーだが、今やレパートリーも懐メロから演歌・歌謡曲など30曲を数えるまでになった。その見た目のハデさや、曲調の親しみやすさから県内各地でのイベントに呼ばれての公演活動は年間10回を数え、高齢にムチ打っては出かける日々を送っていた。

第20回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『ぼけやへん~素人ちんどん 人生のキセキ~』(制作:テレビ愛媛)は、高齢者による素人ちんどんクラブの1年を追った。

 結成して15年。等しく流れゆく時間は、メンバーに「老い」という現実をつきつけはじめた。気力も弱まり、昔は面白おかしくやっていた口上や寸劇など工夫を凝らす公演をするでもなく、「まだまだやりたいのに」という思いとままならない現実のはざまでただ淡々と週2回の練習に集まる日々。誰も面と向かっては口にはしないが、メンバー間には「しょうがない日常」が砂漠のように広がっていた。そんな思いを察した若手メンバー(57歳)がある日、新曲の練習を提案。曲は、愛媛県出身のテノール歌手秋川雅史さんのヒット曲「千の風になって」。この歌詞を農村応援歌版に替え歌にして歌おうというのだ。メンバーにとっては実に8年ぶりの挑戦となる新曲の練習。これに応えて15年前ちんどんメンバーにドレミを教えてくれた恩師(78歳)も久々に指導に復帰。しかし先生は耳の病でほとんど聴力を失っていた。教える先生も指導を受ける生徒も共に高齢者。久々にまた、あの楽譜との格闘の日々が戻ってきた。

 体当たりの練習が続く中、そんなメンバーの思いを受けて、小さな山里は3月の初旬、新曲の初披露の場を作ろうと町をあげてのひな祭りを計画。地元の風習に従って旧暦の節句(4月3日)にひな祭りは公民館で開かれることになった。その矢先―。3月11日東日本大震災発生。被災地から1500キロ。遠く離れたここ鬼北町でもイベント自粛があいつぎ、ひな祭りも中止になった。せっかく祭りに向けて動き出した気持ちのやりどころは? もやもやとした思いの中で新曲の練習が続く中、メンバー出した答えは、愛治ちんどんクラブが主催してのチャリティー演奏会だった。これまでイベントに呼ばれることはあっても、イベントを主催したことはなかった。今までの自分たちでは考えられなかった行動に、戸惑いながらも演奏会実現に向けてひたむきに頑張る姿は自粛ムードだった町の人を再び動かし始めた。

 4月。町の小学校で開かれた手作りのチャリティー演奏会には、メンバーの予想を反して満席御礼の盛況。笑顔をも忘れての力いっぱいの演奏。ちんどん化粧で白塗りにするも、農作業で焼けた黒い顔。汗だくになって、目には涙をためながらクラブの会長が集まった町の人々に語りかけたことは―「ここにいる人のために演奏する」。この場所に生まれ、この場所で死んでゆく。そんなふるさとが自分たちをちんどんを育ててくれた。そんな町に感謝し、自分たちはまた明日を迎える。

 元気な者が、困っている人を助けるのが道理なのだと。超高齢化社会が幕をあけた日本。誰もが抱える「生」と「老い」への不安。それは「死」をもしのぐものだと老人たちは口をそろえる。

「幸せに老いるには」というテーマのもとスタートした取材はいつのまにか、「人が明日を生きる力」を見つめていた。変わらずやってくるはずの明日は、もはや当たり前の明日ではないかもしれない。震災を境にそうした日常に対するいとおしささえ感じるようになった今、彼らが年を重ねてこそ見出した生き方に今日もまた励まされる。ここには、「まだあの日本がある」。ここには、明日を生きる全ての人にエールを送る、「お達者リアルライフ」がある。

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水沼智寿子ディレクターコメント
 番組の舞台は山深い高知県との県境の町、北宇和郡鬼北町という町、人口1000人あまりの小さな集落です。過疎、高齢化、老人の独居。全国の地方が等しく抱える問題の縮図が ここにはあります。ここで活動する高齢者による素人ちんどんクラブの1年を追いました。クラブ結成15年目を迎え、メンバーの平均年齢もほぼ70歳となった今、彼らの目の前には体力、気力、さまざまな「老い」が現実となって忍び寄ります。自らの「限りある生」に気持ちの折り合いをつけながらどう残された時間を生きるのか。そんな毎日に彼らがおのずと見出した明日を生きる力、それは「意欲を持つ」ことでした。今回取材の間に私たちは、彼らがこの「意欲」に突き動かされ、自分たちでは思いもよらなかった力を発揮するさまを目の当たりにしました。そんな姿を淡々と描くことで、さまざまな明日を生きる力にエールを送りたい。そんな思いで制作に取組みました。

ナレーター:由紀さおり
ディレクター:水沼智寿子
プロデューサー:大出知典



「第20回FNSドキュメンタリー大賞」 1月29日放送 フジテレビ
2012年1月27日 産経新聞関西版

 フジテレビは1月29日、「決定!第20回FNSドキュメンタリー大賞」を、午後4時から放送する。同番組は、昨年に行われた「第20回FNSドキュメンタリー大賞」の入賞作品を紹介する番組。今回は、FNSドキュメンタリー大賞20回目の記念番組として、俳優・歌手である中村雅俊が、番組のナビゲーターを務める。中村は、昨年3月11日に発生した東日本大震災で津波の被害を受けた宮城県牡鹿郡女川町の出身で、震災後に何度も女川を訪れ、ライブなど様々な支援活動を行っている。

 今年度のドキュメンタリー大賞の受賞作品のテーマは、高齢化や教育、震災など、いずれも今の日本を象徴するもの、「地方」でより大きな問題として顕在化している。また、昨年の震災をきっかけに、「故郷」や「地方」の大切さに気付いた人も多いと言われている。番組では、震災をきっかけに、中村が女川の思い出の場所を訪ね、地元の人々と触れ合い、故郷への思いや若き日に描いた夢、さらには震災後に日本が向かうべき姿を語る中で、それとリンクするかのように受賞作品を紹介してゆく。

 大賞は、「ぼけやへん~素人ちんどん 人生のキセキ~」(テレビ愛媛)。愛媛県北宇和郡鬼北町。人口1000人あまりの小さな集落に素人ちんどん「愛治ちんどんクラブ」の1年を追った作品。平均年齢約70歳という彼らは「老い」という現実と向き合いながら、8年ぶりの新曲に挑戦。そして、東日本を襲った大震災の影響はこの小さな村にも及ぶ。自分たちに何ができるのかを考えた末、これまでの自分たちでは思ってもみなかった挑戦をする…。

 優秀賞は、「獲っちゃる~広島三栄ジムの挑戦~」(テレビ新広島)、特別賞は「自然のふところで~森のようちえん まるたんぼう流~」(山陰中央テレビ)と特別賞「浜からの証言~2011.3.11東日本大震災~」(岩手めんこいテレビ)となった。


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