NNNドキュメント'08「笑って死ねる病院」

NNNドキュメント'08「笑って死ねる病院」
2008年6月29日深夜放送 日本テレビ

制作:テレビ 金沢
ナレーター:柳生 博

全国で相次ぐ病床の閉鎖、患者の難民化、激務に疲れ果てる医師たち…。行き場のない患者が公園に置き去りにされる時代に、終末期患者の「最後の願い」を叶えようという病院があります。

金沢市の「城北病院」。ベッド数314床、職員数430人の中規模病院です。全国では約4割の病院が赤字経営で、倒産するケースもある中、この病院は差額ベッド代を取らず、生活困窮者には無料で診療し、そして何よりも終末期患者の“最後”を重要視しています。

「桜を眺めたい」「もう一度家に帰りたい」「カラオケに行きたい」…。
余命わずかとなった患者たちが願いを申し出ると、医師や看護師たちは人手不足の現場をやりくりし、病院の医療機器や介護カーなどを持ち出して、実現しようと試みます。もちろん、厚生労働省の診療点数にはあてはまらないため、病院の収入はゼロ。それでもスタッフは「患者が笑顔でいられるように」と奔走します。こうした“赤ひげ魂”は、自分たちの健康は自分たちで守ろうと昭和59年に地域の人たちがお金を出し合って小さな診療所を作ったという、病院の生い立ちにありました。

肺がんの末期で、余命あと一週間と告げられた笹島吉郎さん(82歳)。妻も老いて老人ホームに入居し、頼りの一人娘も仕事と家事、両親の介護に追われています。自分の周りの環境が分かっているだけに、家族に迷惑をかけまいと外出もせずの入院生活…。そんな笹島さんの最後の願いは「お姉さんに会いたい」でした。医師や看護師たちが連絡を取り、4年ぶりに再会を果たします。そしてその後、病状が持ち直し、行きつけの理髪店にも看護師たちと酸素ボンベ持参で出かけることができました。とびっきりの笑顔を見せた笹島さんはその1か月後、みんなに看取られて穏やかな顔で亡くなりました。

多少のリスクを負っても、患者の願いを叶えることに喜びを感じる城北病院の医師や看護師たち。死期が迫っていることを患者に宣告したとき、家族はどんなことをし、病院は何をしてあげられるのか?後期高齢者医療制度の導入や療養病床の削減など、行政に翻弄される病院や患者、家族にとって、この病院は地域の人たちのための医療のあり方を教えてくれます。



・このドキュメンタリーは、さまざまな賞を得てから新書にもまとめられた。放送は2008年ということで、現状とは違っているだろう。題材は、末期ガンなど医療の必要性が薄れた患者たちが病院から追い出されるという現実と、それに翻弄される病院の姿を追ったもの。

この城北病院は、設立経緯があって住民が出資者であることで、住民本位の医療を求めている。それは診療報酬では賄えない分であり、ボランティア的な行動となってしまう。ただ、ぎりぎりのところで頑張ろうということを感じさせる番組に仕上がっていた。

医療系ドキュメンタリーには、不条理な死が題材としてある。もっと医療が充実していたら違った人生を送ることができるというメッセージである。そして、番組は彼らの死をもって終わる。確かにインパクトがあり、いのちの重みというのは安っぽいスローガンとは違うものだ。ただ、それだけを中心にすればお涙頂戴ということになってしまう。

番組で登場する余命のない末期がんの患者男性が、外出し自宅に戻り、行きつけの理髪店で髪を切ってもらうシーンがあった。同行した看護師らのことば通りに、表情が違ってバイタルも安定していた。これが人間の生きる力というものなのだろう。ただ単に病院のベットで過ごすことだけでなく、最後の望みを叶えることが彼に大きな幸福を感じさせたのだろう。

日本の医療環境は世界的にも高水準であるが、さまざまな制度的な問題を持っている。今年は税と社会保障一体改革をすべく議論がまとまろうとしている。そこでは医療費の問題だけでなく、どのような医療を受けたいのか負担はどうするのかという問題を避けては通れないことになる。

そのためには、歪みが少ない報道が求められる。最期をどのように暮らすのかを考えさせるドキュメンタリーが作られることを望みたい。


全日本民医連ホームページ 特集「笑って死ねる病院」は、こうしてできた。

笑って死ねる病院 (ワニブックスPLUS新書) [新書]
テレビ金沢 編

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新書: 205ページ
出版社: ワニブックス (2009/10/8)


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