フロム・イーブル ~バチカンを震撼させた悪魔の神父~

フロム・イーブル ~バチカンを震撼させた悪魔の神父~
DELIVER US FROM EVIL

神父が危険な少児性愛者であると知りながら、彼をかばい続けた教会。その後30年間にわたって、神父は子供たちを虐待していく…。本人、被害者たちのインタビューも収録した、衝撃的なドキュメンタリー。

2006 / アメリカ / 101min
【監督】
Amy Berg(エイミー・バーグ)
【製作スタッフ】
Ray Baldwin(レイ・ボールドウィン)
Michael Brown(マイケル・ブラウン)
Amy Berg(エイミー・バーグ)



ライナーノーツ from 後藤啓二

「フロム・イーブル」は、カトリック教会の神父による子どもたちへの性的虐待の実態を記録したドキュメンタリー映画である。何十年にわたりおぞましい性的虐待を続けてきた神父と、それを知りながら握りつぶし、被害を拡大させた司教らカトリック教会の幹部らの腐敗堕落が浮き彫りにされている。
本映画によると、アメリカだけで10万人以上の被害者が存在し、多くは大人になってもトラウマを抱え苦しんでいる。カトリック教会の神父の10%は虐待者であり、4世紀以来続いている問題であるという。本映画では、大人になった被害者やその親たち、長年虐待を行ってきた元神父、告発を行ってきた一部の神父や弁護士、警察官たちの証言を通じて、これらの問題を明らかにしている。
子どもに対する性的虐待を行う者が絶対に許されぬ犯罪者であり、厳罰に処せられるべきであることは言うまでもない。しかし、本映画で明らかになったのは、それと同等に許せないカトリック教会の対応である。神父による性的虐待を知りながら、自らの保身のためか、カトリック教会の「権威」を守るためか、隠ぺいし、うそをつき、被害者の訴えを門前払いにし続けてきたカトリック教会は誠に許しがたい。本映画では、カトリック教会に抗議する子どもたちのプラカードに「犯罪者でなく子どもたちを守って」と書かれてあった。何をかいわんやである。
このようなことを企業なり政府が行ったとしたら、企業は倒産し、政府は政権交代を国民から迫られる。しかし、宗教団体にはそれがないということだろうか。コンプライアンスやリスク管理という考えを持ち出すまでもなく、かかる不誠実な対応はおよそ許されないのであるが(宗教団体であればなおさらである!)、いまだにかかる対応をとり続けているというのは信じられない思いである。宗教団体の閉鎖性を考えさせられる。
わが国でも、児童虐待、中でも性的虐待の問題が大きな社会問題になっている。子どもに対する性的虐待の多くは、父親や兄、教師、スポーツ等の指導者、教会関係者たちによりそのほとんどがなされている。保護者や指導者的立場にある者は、子どもに対する支配的・指導的立場にあることから、性的虐待を行いやすく、被害を受けた子どもも訴えることが極めて困難な立場にある。性的虐待はごく一部しか外部に明らかにされず、大部分の子どもは苦痛にあえぎながら助けを求められない現状にある。性的虐待を少しでも少なくするための施策が早急に必要である。虐待行為を行った者に対する厳罰化、虐待を受けている子どもが被害を訴えやすくするための子どもが容易に相談できる電話相談や駆け込み寺等の体制の整備、医師、教師等による発見・通報活動の励行などできることは何でも実施しなければならない。
わが国は、国際社会からの批判を浴びながらも、いつまでたっても児童ポルノの単純所持を法律で禁止しようとせず、子どもを性の対象とすることを容認する社会である。子どもに対する性的虐待についても、「臭いものにふた」的な考えで、正面から対策を講じているとは言い難い。性的虐待はカトリック教会のみでなされているわけではない。わが国のいたるところで行われており、われわれはカトリック教会を偉そうに責めることができる立場にはない。本映画を見て、わが国を含め全世界の一人でも多くの人々が、子どもを守るための取組に立ちあがることを期待したい。



【DVD情報】

フロム・イーブル ~バチカンを震撼させた悪魔の神父~
松嶋×町山 未公開映画を観るTV [DVD]

51jPH.jpg

「DELIVER US FROM EVIL」

神父が危険な少児性愛者であると知りながら、彼をかばい続けた教会。
その後30 年間にわたって、神父は子供たちを虐待していく・・・。
本人、被害者たちのインタビューも収録した、衝撃的なドキュメンタリー。

※12歳未満の年少者の観覧には、親又は保護者の助言・指導が必要です。

監督: エイミー・バーグ
販売元: アニプレックス
DVD発売日: 2011/02/23
時間: 101 分




【追加記事】

「聖職者の不祥事」が続く教会
2011年5月8日 ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 欧米のローマ・カトリック教会では昨年、聖職者の未成年者への性的虐待事件が次々と発覚し、教会はその対応に大慌てとなったが、年が明けると教会側もメディア側も「この問題は終わった」といった感じが強い。それでは聖職者の性犯罪が起きていないのか、といえばそうではない。余り報道されないだけで、欧米各地の教会では聖職者のさまざまな不祥事が報告されている。
 ベネディクト16世の出身国、独ケルン大司教区のマイスナー枢機卿は5日、「自分は同性愛者だ」と宣言した神学者ダビット・ベルガー氏に対し、学校での宗教授業の教師資格を剥奪した。その理由について、「ベルガー氏に弁明の機会を与えたが、同氏は自身の見解を変える意思のないことを表明した。同氏は教会の道徳・倫理的規約から明らかに離れている。もはや回復の余地はない」からという。
 それに対し、ベルガー氏は「教会には多くの同性愛者の神父や修道僧、宗教教師がいる。彼らは自分が同性愛者であると告白したことを感謝している」と述べている。ベルガー氏はローマの聖トマス・アクィナス法王アカデミーのメンバーで、雑誌「神学的なもの」の発行人兼編集長であった。同氏は昨年11月、同性愛者としての体験を綴った「聖なる仮象」というタイトルの著書を出版している。
 また、バチカン放送(独語電子版)によると、バチカン法王庁は、児童ポルノ関連書籍などを所持していたことを認めたカナダ教会のレイモンド・レヘイ司教に対し、教会法に基づき、処罰調査を開始した。同司教は2009年まで4年間、アンティゴニッシュ教区責任者だった。同司教は09年9月、空港での検査で児童ポルノ関連資料が見つかった。その直後、同司教はベネディクト16世に辞任を申し出、受理されている。
 オーストリアで昨年12月、オーバーエスタライヒ州のカトリック教会慈善団体「カリタス」の22人の関係者が1960年から80年代にかけ、未成年者に性的虐待を犯していたことが発覚したが、事件が既に時効となっていたため、当地の検察庁は調査を停止している。
 ベルギー教会では昨年4月以来、聖職者による未成年者への性的虐待事件が次々と発覚し、大混乱を呈したが、昨年4月に甥に対する性的犯罪を理由に辞職したロジャー・バンゲルーべ元司教は今年4月14日のテレビのインタビューの中で、1973年から86年の間、別の甥に対しても性的虐待を犯していたことを認めた。ベルギー教会では、第2バチカン公会議で「ペリトゥス」(専門助言者)を務めたフランソワ・フタール神父(85)が、1970年代、当時8歳の甥に性的虐待を加えたことを認めている、といった具合だ。
 スイスのジュネーブで一人のローマ・カトリック神父が今年2月11日、自殺した。同神父は今月初め、2件の未成年者への性犯罪嫌疑を受けたばかりだ。また、ベルギーの神父は今月5日、自殺している。同神父は3週間前、ぺドフィリア(小児愛者)の疑いで告訴されている。同神父は長い間、アフリカで宣教活動をしていた。

 上記に挙げた聖職者の未成年者への性的虐待や不祥事は、残念ながら、氷山の一角に過ぎない。



性犯罪を犯した神父の「自殺」
2011年2月15日 ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 スイスのジュネーブで一人のローマ・カトリック神父が11日、自殺した。現地メディアが報じた。同神父は今月初め、2件の未成年者への性犯罪容疑を受けていた。
 未成年者への性的虐待は許されない罪である。同時に、命を自ら絶つことも大きな罪だ。それより以上に哀しいことは、神父は未成年者への性的行為が罪であることを誰よりも良く知っていたこと、そして自殺が神の悲しみとなることも分かっていたことだ。その意味で、スイスの神父の自殺は二重の痛みだ。
 アイルランドのローマ・カトリック教会で聖職者の性犯罪が暴露されて以来、ドイツ、ベルギー、オーストリア、スイスなど欧州各地のカトリック教会で聖職者による性犯罪が次から次と明らかになっていった。多くのケースは時効のため、性犯罪を犯した聖職者は教会内の聖職を失うだけで法的な処罰を受けたケースはこれまでほぼ皆無だった。
 神父の自殺を知った時、「聖職者が結婚し、家庭を築くことができたら、独りで悩み苦しむことはなかっただろう」という思いが一層、強まった。
 バチカン日刊紙オッセルパトーレ・ロマーノは13日、「バチカン聖職者省長官マウロ・ピアチェンツァ枢機卿は、聖職者の独身義務はエロと性の氾濫する社会の中で預言者的意義を帯びている」と語ったという。独身制を擁護した同枢機卿は世界教会の約25万人の聖職者の総責任者だ。
 ローマ・カトリック教会総本山のバチカン法王庁は「聖職者の独身制は神父や修道僧らの性犯罪問題とは関連がない」と主張し続けてきたが、果たしてそうであろうか。もちろん、独身制を廃止したからといって聖職者の性犯罪が皆無となるとは思わないが、確実に減少するはずだ。
 独与党「キリスト教民主同盟」(CDU)の著名な8人の政治家は先月21日、ベルリンで「カトリック教会の司教たちは既婚聖職者の聖職を認め、聖職者の独身制を廃止すべきだ」と公式表明し大きな衝撃を与えたが、同時期、ローマ法王べネディクト16世の出身国の228人のカトリック神学者が聖職者の独身制の再考などをバチカンに呼びかける覚書「教会2011年、必要な出発」に署名しているのだ。これらの反応は聖職者の性犯罪事件が大きな契機となって生まれてきたものだ。決して偶然の叫びではない。
 一人の神父の自殺は聖職者の独身制の再考が急務であることを改めて明らかにしている。


関連記事
スポンサーサイト

コメント


トラックバック

↑