ETV特集 ハイチのマザーテレサ~83歳・日本人女医の挑戦~

ETV特集 第339回 
ハイチのマザーテレサ~83歳・日本人女医の挑戦~
2011年1月23日 NHK教育

去年1月の大地震で22万人が死亡した中米のハイチ。あれから1年たった今も復興は遅々として進まず、被災者の暮らしはほとんど変わっていない。首都では約130万人が仮設テントで暮らし、衛生状態は悪化の一途をたどっている。
10月にはハリケーンが直撃。その直後には北部でコレラが発生、瞬く間に全土に感染が拡大した。死亡した人は12月末までに3千人を越え、感染者は14万人に膨れ上がっている。11月末には大統領選挙が行われたが、選挙に不正があったとして各地で暴動が起きた。情勢は混迷する一方だ。
この大混乱する国で人々から「ハイチのマザー・テレサ」と慕われる日本人女性がいる。ハイチで、34年間にわたって医療活動を続けてきた医師、須藤昭子さん(83歳)だ。カトリックの教会に所属する修道女でもある須藤さんは、結核やハンセン病の治療に力を注ぎ、多くの貧しい人々の命を救ってきた。
現在の須藤さんの最大のミッションは、総予算およそ2億円の国立結核療養所の再建である。しかし計画は、ハイチ政府、WHO世界保健機構、さらに日本政府や各国の援助団体などが絡み、須藤さんの思い描いていたものとは全く違うものとなりつつある。大統領選挙後の混乱が続く中、須藤さんは再建計画の見直しを求めて、関係者と交渉すべく東奔西走している。
番組では、大地震から1年、須藤さんの生涯をかけた大仕事、病院再建に向けた苦闘を見つめ、国際援助の難しさを浮き彫りにしていく。



・国立結核療養所の仮設テントで50人が暮らす。今も大統領選の混乱が残っているようだ。

番組は、須藤医師がハイチに帰国した昨年10月あたりからの取材のようだ。全体を通して見て、一応の体裁はあるものの取材が不十分で伝えたいことが分からなかった。そのために、必要かと思われるカットが散見されて全体の緊張感をなくしてしまった。

最貧国ハイチに起きた地震と、ハリケーンやコレラ蔓延などは日本にも伝えられている。国全体が混乱状態ということだ。その中で、結核治療に生涯を捧げる修道女の生き方などが脚光を浴びる状況ではないかもしれない。
もはや国の行政組織が機能していないのも歴史的な問題だろう。この番組では、そうした問題には触れていなかった。

物足りなさを感じたのは、須藤医師が医療行為にではなく、病院建設をめぐる問題に忙殺されていることだ。本来ならば、病院管理に関しては専門の職員が担当しなくてはならないのだが、病院の運営自体、修道会に任されているのが現状だという。むろん予算も援助もないらしい。

現場に不相応な病院計画をめぐっての駆け引きは、須藤医師には手に余ることに違いない。それを撮影したところでどうなるというのだろうか。医師の仕事は病気の治療であり、快癒後は去っていくものだ。須藤医師は、淡々と治療を行ってきたのだろうと推測する。それがことさら美談となるわけでもない。

彼女が、現地の日本大使館臨時大使と面談したり実務担当の三等書記官と話をしていたが、こうした場面にカメラが入っていいものなのだろうか。すべては交渉事なので、直線的に出ても上手くゆくことはないものだ。カメラが入ることで、相手方は身構えてしまうだろうし差しさわりのない雑談に終始するからだ。

彼女は、もう日本に帰国することはないと言う。番組でも、日本人に対して援助の依頼とかメッセージらしいものはなかった。海外援助の困難さは、援助慣れした人を作るのではなく、自ら自律できる国民に育てることだ。だが、それを達成することは難しい。

このブログでも触れた、マザー・テレサのドキュメンタリーにも同じような政府との軋轢の場面があった。マザーには何か強い確信があるように行動し、事態がなぜか上手く運んでいった。奇跡は期待するものではなく起こすものかもしれない。

なお、「ハイチのマザーテレサ」という呼称については、番組では触れなかったし、周りにいる病院関係スタッフもドクター須藤という認識しか持っていなかった。彼女の行動を見ていると、そんな決め付けさえ失礼なことだろう。自分自身がマザー・テレサみたいな存在なんて思うはずもない。



〈以下追加引用〉

「ハイチのマザーテレサ」を支援
2011年7月17日 NHK

去年の大地震で20万人以上が犠牲になったカリブ海のハイチで、「ハイチのマザー・テレサ」と呼ばれる日本人女性が活動拠点としている結核療養所の施設の一部が、復興を支援する日本の自衛隊によって建設され、このほど引渡し式が行われました。
ハイチの西部レオガンにあるこの結核療養所は、去年1月の大地震で、4棟の病棟すべてが全半壊し、およそ60人いる入院患者が、猛暑の中、テントで治療を受けているうえ、シーツなども屋外で手洗いするしかない、劣悪な環境に置かれています。こうした衛生状態を改善しようと、復興支援のため派遣されている、兵庫県伊丹市が本拠地の陸上自衛隊第3師団を中心とした部隊が、国連のプロジェクトの一環で、洗濯場として使える建物を建設しました。この療養所は、現地の住民の医療支援に長く携わり、「ハイチのマザー・テレサ」と呼ばれる、医師で修道女の須藤昭子さん(84)が活動拠点としていて、15日に行われた建物の引き渡し式では、須藤さんのほか、国連や自衛隊関係者がテープカットをして完成を祝いました。屋内の洗濯場には、井戸からくみ上げた水がパイプで送られ、地元の子どもたちが、蛇口から流れ出る水に手を差し伸べて歓声を上げていました。須藤さんは、「今回の自衛隊の支援は本当にありがたい。テントで寝ている患者さんのために、一刻も早く病棟を建ててあげたい」と話しています。


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